1.アナンダマイドは、培養歯肉線維芽細胞においてLPS刺激により誘導される炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、MCP-1)産生をNF-κB活性を抑制することにより有意に抑制した。歯周炎罹患患者の歯肉溝滲出液中のアナンダマイドの濃度・総量や歯周炎罹患組織中のアナンダマイドレセプターは、ポケット深さと比例して増加する傾向を示した。瀬培養歯肉線維芽細胞においては、LPS刺激によってもアナンマイドレセプターは増加した。以上よりアナンダナイドやそのレセプターは、慢性歯周炎局所で炎症を制御している可能性が示唆された。 2.アナンダマイド刺激によりアナンダマイドレセプターのひとつであるCB2レセプターが活性化されると上皮細胞において細胞中のプロオピオメラノコルチンが分解されβエンドルフィンが産生され、神経細胞のμオピオイドレセプターに反応し疼痛抑制効果を示すことが報告されている。ヒト単球様細胞(U937)やヒト歯肉上皮系細胞(Ca9-22)をアナンダマイドで刺激することによりβエンドルフィンの産生が認められた。また歯周炎罹患部位の組織において、歯肉上皮細胞・歯肉線維芽細胞・マクロファージ様細胞・血管内皮細胞に免疫組織化学的にβエンドルフィンの陽性所見が認められた。 以上より、歯周炎罹患部位では、アナンダマイドを始めとする内因性カンナビノイドやβエンドルフィンなど疼痛緩和関連物質や各々のレセプターが存在することが確認された。 今後、歯周組織中においてもアナンダマイドやアナンダマイド刺激により産生されたβエンドルフィンが炎症性疼痛を制御しているかどうかを検討する予定である。
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