閉塞膀胱モデルラットを用いた低活動膀胱への骨髄細胞移植による下部尿路機能の再構築の可能性について検討した。 初年度となる平成18年度は、移植のレシピエントとなる低活動膀胱を呈するモデルラットの作製から行った。ハロセン麻酔下で経腹的にSD系メスラットの尿道にカテーテルを沿わせ、尿道周囲をカテーテルと共に糸で結紮した後、カテーテルを抜いて人工的に不完全尿道閉塞を作製した。不完全尿道閉塞を2週間継続した後、再び開腹して閉塞を解除し、残尿が3-5mlの低活動膀胱ラットを移植実験のレシピエントとして用いた。 次に、移植のドナーとなるGreen fluorescent protein(GFP)遺伝子導入ラットからの骨髄細胞の採取と培養を行った。ハロセン麻酔下でSD系-GFPラットの大腿骨から骨髄細胞を採取し、細胞をウシ胎児血清含有液体培地にて洗浄した。その後、骨髄細胞浮遊液を培養用シャーレで培養し、5日間後にシャーレ底の接着性細胞を回収してGFP陽性骨髄細胞として用いた。 上記の手法で得られた低活動膀胱ラットを移植実験のレシピエントとして低活動膀胱への骨髄細胞移植を行なった。ハロセン麻酔下にレシピエントの膀胱壁にGFP陽性骨髄細胞浮遊液(1×10^<6-7>細胞/0.5ml)を注入した(移植群)。骨髄細胞のかわりに生理食塩水0.5mlを注入したラットを非細胞移植群とし、開腹のみを行なったラットを開腹対照群とした。移植から4週間後、ウレタン麻酔下に等容量性膀胱内圧測定を行い、残尿と膀胱活動の変化を比較検討した。 その結果、移植前の非細胞移植群および細胞移植群の残尿量は、開腹対照群に比べて増加していた。しかし、移植後4週目では、非細胞移植群に比べて細胞移植群の残尿量は減少していた。また、移植後の非細胞移植群および細胞移植群の膀胱収縮圧は開腹対照群に比べて低下していたが、非細胞移植群に比べて細胞移植群の膀胱収縮圧は上昇していた。 以上のことから、低活動膀胱への骨髄幹細胞移植により、排尿障害が改善できることが示唆された。
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