申請者らは2004年にマルファン症候群2型の原因遺伝子を単離して以降、全国からMFS症例を集積し(65症例)、既知当該責任遺伝子の変異解析を行なった。その結果、MFSの半数にFBN1変異が、約5%にTGFBR2変異が同定されるもの、残りの45%程度の症例では、遺伝子異常を確認できないことが判明した。TGFBR1/TGFBR2及びFBN1/FBN2の網羅的な遺伝子変異解析を継続し、それぞれの変異遺伝子ごとの疾患スペクトラムを決定すると共に、変異未同定群を選択する。 この過程で集積された染色体異常inv(14)を合併する症例およびFBN1・TGFBR2異常のない症例群は本研究における新規遺伝子単離の重要な解析対象である。具体的には染色体構造異常を有する患者の14番染色体長腕逆位の逆位切断点を分子細胞遺伝学的に解析し候補遺伝子を特定する。症例と偶然に合併したMFSの発症に関与しない染色体異常である可能性も否定はできないが、ゲノム解析を行うことで結論できる。 18年度は患者の14番染色体長腕逆位の近位および遠位切断点を200Kbまで狭めた。切断点領域には複数の遺伝子が登録されており、今後さらに詳細な解析をおこない逆位切断点において断裂した遺伝子が存在しないか研究を進める。染色体逆位においては遺伝子量の増減は存在しないため、切断点に遺伝子が位置していた場合有力な候補遺伝子である。原因遺伝子であるかどうかの検討は遺伝子変異解析済みコホートを用いFBN1・TGFBR2異常のない症例で当該遺伝子の変異解析を行うことで結論する。 試料等提供者に対する倫理的配慮として(1)研究対象者の拒否権の尊重:患者・および親権者(両親)が自由に同意・拒否できるように配慮し、(2)インフォームドコンセント:本研究の主旨、方法、危険性の有無などを十分に説明した後、文書による同意を得て提供された試料を研究に用いる。
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