研究概要 |
低酸素製肺血管収縮(HPV)にはカルシウム依存性、非依存性の機構が共に関与しているが、各々に複数の経路があり、経時的な変化と合わせ複雑な収縮機構となっている。本研究ではラット肺細動脈リング標本を用い、張力・細胞内カルシウム濃度同時測定を行うことでカルシウム依存性、非依存性の収縮状態を同定し、カルシウム非依存性収縮に関与するとされるCPI-17,MYPT1リン酸化を調べることで、各々の収縮に対する役割を明らかにすることを目的とした。 平成18年度はラット肺動脈リング標本を用いオーガンバス内でHPVを惹起させ、張力の経時的変化を見た。肺動脈は低酸素暴露後、二相性の収縮を呈し、早期に急峻な収縮を示すが徐々に弛緩した後、再び持続的な収縮を示した。このHPVモデルを確立させ以下の実験を開始した。 1)肺動脈における張力、平滑筋細胞内カルシウム濃度同時測定。カルシウム濃度は暴露後に上昇がみられた。今後時間的変化の特性を把握する。HPVにおいてフリーラジカルが増加又は減少しているのかは未解決であるが、本実験と同様の方法で平滑筋細胞内フリーラジカル測定が可能であり追加して行う。 2)HPV惹起中の二相性の各々の収縮時、弛緩状態におけるmyosin regulatory light chain(RLC),MYPT1、CPI-17のリン酸化状態測定。 RLCは収縮状態とほぼ一致してリン酸化増加がみられた。一方MYPT1は二相目の収縮で増加しているものの、一相目では明らかでなかった。今後Rho-kinase, PKCに対する阻害剤を用いシグナル伝達機構を解明していく。更にRho-kinase, PKC等に対するshRNAをcodeするplasmidまたはadenovirus vectorをin vivoで経気管的に投与し、wholeratにおいてHPVに対する影響を検討していく。
|