頭頸部癌において局所レニン-アンジオテンシン(RAS)系が存在するかどうかを検討するために、頭頸部扁平上皮癌細胞株17種について、アンジオテンシンIIのレセプターであるAT1Rの発現をウエスタンブロッティングで検討した。その結果、すべての細胞株においてAT1Rの発現がみられ、局所RASの存在が示唆された。次に、頭頸部癌においてアンジオテンシンIIが増殖因子になりうるかどうかを検討するため、17種の頭頸部扁平上皮癌細胞株をアンジオテンシンII存在下で培養し細胞増殖能を測定した。その結果、すべての細胞株においてアンジオテンシンIIによる細胞増殖促進効果がみられたため、頭頸部癌には局所RASが存在し、腫瘍細胞の増殖に関与している可能性が示唆された。 また、アンジオテンシンIIのレセプターブロッカーによる腫瘍増殖抑制効果を検討するため、頭頸部癌細胞株であるHSC-3にアンジオテンシンIIレセプターブロッカー存在下で培養し、細胞数を測定したところ、アンジオテンシンIIレセプターブロッカーはアンジオテンシンIIによる増殖能を有意に抑制することが判った。さらにその時のタンパクを抽出し、ウエスタンブロッティングでMAPKのリン酸化を検出したところ、アンジオテンシンIIによりリン酸化されたMAPKはアンジオテンシンIIレセプターブロッカーによりリン酸化が抑制された。 以上のことより、頭頸部癌には局所RASが存在し、アンジオテンシンIIレセプターブロッカーによる抗腫瘍効果が期待される。
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