頭頸部癌は重要な機能を持つ部位に発生し、進行癌になると予後が悪く、未だに確実な治療法が確立されていない。これまでに我々は、様々な分子標的治療薬を用いて頭頸部癌の抗腫瘍効果を検討してきたが、個々により効果に差があるため、新規の分子標的治療薬が求められている。そこで本研究では、新しい分子標的治療薬として我々が発見したアンジオテンシンII受容体プロッカー(ARB)の頭頸部癌に対する抗腫瘍効果を検討する。 興味深いことに、昨年度の検討で、頭頸部癌細胞においてATIRが発現していること、またAng-IIによって増殖が促進する細胞が存在することを我々は確認した。 そこで、頭頸部癌細胞におけるレニン-アンジオテンシン系のメカニズムを調べるために、各細胞からタンパクを抽出し、ウェスタンブロッティング法を用いて、レニン-アンジオテンシン系のタンパクの発現を検討したところ、Ang-IIが結合するもう一つのレセプターであるAT2Rもすべての細胞において発現していることが判明した。さらに、レニンから変換されたアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素であるACEの発現を調べたところ、ACE1を発現している細胞は4細胞のみであった。また、ACE2についても発現を検討したところ、ほとんどの細胞で発現が確認された。以上の結果から、頭頸部癌細胞において、局所レニン-アンジオテンシンシステム系が存在することが判明し、アンジオテンシンII受容体プロッカーが新しい分子標的治療薬として抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆された。
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