線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)は、強力な血管新生促進作用を有し、その受容体はチロシンキナーゼ活性を有する。FGFは血管系に対して血管新生(angiogenesis)および動脈形成(arteriogenesis)の両方の促進作用をもつ。機能的血管形成におけるFGFを中心とした血管形成の分子機序の解析が、これからの血管新生の治療的制御を考えたときに戦略的に重要になると考えた。本研究では血管内皮前駆細胞および内皮系細胞に特異的に発現しているTie2をプロモーターとするヒト活性型FGFRを過剰発現する遺伝子改変マウスを作製し、成熟した血管形成を担うFGFシグナルの内皮系細胞への果たす役割と、PDGFやTGF-βなど他の血管増殖因子との相互作用について解析することを目指す。平成18年度は、まず下肢虚血モデルを作製、その表現型を解析した。その結果、虚血作成後、虚血肢の血流の低下がみられた。下肢虚血作製3週後虚血組織での、単位面積あたりの血管内皮細胞数(CD31^+細胞数)と最小血管数(α-SMA陽性血管数)が減少していた。さらに大動脈からExplant法にて血管内皮細胞を分離培養し、各種機能をしらべたところ、(1)VEGF刺激による遊送能、管腔形成能が亢進していた。また動物皮下に埋め込んだMatrigelへの新生血管形成能が増強していた。さらに24時間血清除去や1%低酸素暴露で誘導される内皮細胞のアポトーシスがTUNEL assayにて促進していた。 さらに、内皮細胞のWestern blot法にてFGFRのすぐ下流に存在するFRS2のリン酸化(P-FRS2)が亢進し、。FGFRからの活性化シグナル分子である、(1)PI3-K/Akt経路として、Aktおよびそのリン酸化(p-Akt)、NOSおよびそのリン酸化(p-NOS)、が亢進していた。
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