インテグリンは、細胞-組胞外マトリックス(ECM)間の接着に中心的な役割を果たす細胞膜表面の受容体蛋白質である。インテグリンはその細胞外ドメインでフィブロネクチンやラミニンなどのECMに接することで、ECMに書き込まれた細胞の増殖、分化、形質発現などを制御する多様な情報を読み取っている。一方、細胞内ドメインで様々なシグナル伝達因子やアクチン結合蛋白質と直接あるいは間接的に結合し、細胞外環境情報を細胞内に伝達している。ほとんどのECM分子は糖タンパク質でありながら、その糖鎖の機能に関する研究はまったく行われていない。申請者は上皮系細胞が生体内で足場としている基底膜に多く含まれていて、かつ、がん転移・浸潤と深く関わると考えられる高い細胞分散活性を持つラミニン-5(LN-5)に着目し、糖鎖修飾によるシグナル制御の機構を明らかにすることを計画した。がん転移・浸潤と深く関わる糖転移酵素GnT-IIIがGnT-Vのアンタゴニストであろうと考え、これらの酵素がラミニンの機能を制御しているとの仮説をたて、これを証明するため、GnT-IIIおよびGnT-V発現stableクローン(LN-5を高発現する胃癌由来のMKN-45細胞)を確立した。確立した細胞を用いて、糖鎖改変によるLN-5の発現量に及ぼす影響の検討を行い、MKN-45細胞にGnT-III遺伝子を導入することによって発現量や細胞外への分泌量が減少し、逆にGnT-Vの発現によってどちらも増加することを見出した。
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