吸啜リズムを形成する神経回路網は脳幹内に存在すると考えられているが、その詳細については明らかにされていない。本研究では、吸啜運動のリズムの形成にはどのような神経メカニズムが関与しているのかを明らかにするために、吸啜運動を安定して誘発できるラットまたはマウスの脳幹・脊髄摘出標本を開発しすることを試みた。本年度は、新生ラットまたはマウスから脳幹・脊髄摘出標本を作製し、安定して吸啜運動様のリズミックな神経活動を出せる条件を検討した。はじめに、生後0〜1日齢のWistarラットを用いて脳幹-脊髄摘出標本を作製した。呼吸運動の研究においてラットの脳幹-脊髄摘出標本の作製に使われている人工脳脊髄液を用いて標本の摘出を行った。三叉神経感覚根、三叉神経運動根、第5頸髄前根を吸引電極内に保持し、電気刺激もしくは細胞外記録を行った。第5頸髄前根では、呼吸様の活動が見られたが、様々な条件で三叉神経感覚根を電気刺激しても三叉神経運動根からリズミックな活動は記録できなかった。しかしながら、同じ手法を用いて生後0〜1日齢のC57BL/6またはICRマウスで三叉神経感覚根を電気刺激したところ、三叉神経運動根に呼吸より速いリズムが見られた。また、ICRマウスで、片側の顎および舌のついた脳幹・脊髄摘出標本を作製したところ、三叉神経感覚根の刺激で咀嚼運動様の顎の動きが観察された。今後、購入した高感度生体電位増幅器とマニピュレーターを用いて、閉口筋である咬筋、開口筋である顎二腹筋、吸啜運動時に特徴的な活動パタンを示す口輪筋の筋電図と三叉神経運動根からの同時記録を行い吸啜運動リズムを確認する予定である。
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