前年度に引き続き、生体肝移植を受けた20歳以上の成人レシピエントとドナー及びそれらの家族を対象として、半構造化面接を行った。その際には、性別・年齢・術後期間・原疾患・ドナーとレシピエントの続柄などの背景が多様になるように努めた。面接における質問内容は、1.対象者の特性、2.術前の経緯、3.術後の状態と困難、4.全体的評価などであった。面接内容は、対象者の同意を得た上で録音した。調査に当たっては十分な倫理的配慮を行い、特に問題は生じなかった。録音データの逐語録を作成し、それを質的に分析し、移植看護経験者のスーパーバイズを受けた。これまでの分析で、疾患や性別・年齢などの背景が同じでも、一人一人に様々な経緯や思いがあり、きわめて多様性があることがわかった。その中で、比較的多くのレシピエントが経験している困難を抽出することにより、生体肝移植術後の特異的なQOLの要素にする予定である。また、術後の全体的評価は、対象者が生存者で外来通院中のものであるために多少のバイアスはあるが、概ね高かった。全体的評価の低さには、ドナーとの関係が影響している可能性が疑われるため、ドナーとの関係も特異的QOLの一要素として外すことは出来ないと考えている。上記の分析結果を踏まえ、今後生体肝移植術後レシピエントに特異的なQOL尺度の質問紙を作成する予定である。質問紙の内容について、専門家やレシピエントのチェックを受けたり、量的調査においては再テストを行ったりすることにより、信頼性や妥当性の検証を行い、尺度を完成させる予定である。
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