本研究では、口腔レンサ球菌の一種であるStreptococcus gordoniiに発現するシアル酸結合性アドヘジンHsaの感染性心内膜炎における関与を解析することを目的として、S.gordoniiと血球細胞との相互作用について解析を行った。そのために、培養細胞系が確立され、細胞の分化のコントロールが可能な骨髄系未分化cell lineであるHL-60細胞を用いて解析を行った。 1)分化したHL-60細胞にS.gordoniiが付着するかの確認:HL-60細胞は活性型ビタミンD_3や12-0-テトラデカノイルホルボール13-アセテート(TPA)により単球やマクロファージに、レチノイン酸により好中球に分化することが知られている。そこで、分化したHL-60細胞にS.gordoniiが付着するか、また、HL-60細胞への付着にHsaが関与しているかを野生型(DL1株)とhsa変異株との比較により検討した。その結果、単球、マクロファージ、好中球いずれの細胞においてもS.gordoniiの付着が見られた。さらに、hsa変異株ではこのような付着が見られなかったことから、分化型の細胞への付着にHsaが関与していることも明らかとなった。 2)シアル酸含有膜タンパク質がS.gordoniiシアル酸結合性アドヘジンレセプターであるかの確認:ヒト白血球表面にはシアル酸含有糖タンパク質が複数発現していることが知られている。そこで、これらのシアル酸含有糖タンパク質にS.gordonii DL1が付着するか、また、この付着がHsaによるものかを確認する目的で、bacterial overlay法を用いてSDS-PAGEで展開されたHL-60細胞の膜成分への付着を検討した。その結果、Hsa特異的に結合するタンパク質が複数検出され、その内の一つはCD43であった。現在、他のタンパク質の同定を試みている
|