近年、帝王切開率の上昇が世界的傾向として認められている。日本も例外ではなく、今後も女性の晩婚化と少子化、高齢妊娠、未熟児医療の進歩などにより帝王切開率の上昇が予測される。 本研究は帝王切開分娩後の母親の心理状態と出産施設における分娩前後の精神的および教育的支援との関連性を明らかにし、帝王切開分娩における母親の心理的ストレスを軽減させ、出産満足と子どもへの養育態度の向上をはかるための看護指針を提案することを目的とした。平成18年度は、出産施設における実態調査の基礎資料として、以下を実施した。 1.文献レビュー 帝王切開分娩に関する医療の現状を把握するために、医中誌Web版(2000-2006年)から「帝王切開」と「クリティカルパス」または「クリニカルパス」をキーワードにして抽出し、30件を分析した。 その結果、術後の入院期間は平均8.4日で、入院期間の短縮化に伴い、ほとんどの術後スケジュールが早期化していた。これらは母子関係の早期確立にも貢献するものと考えられたが、緊急帝王切開の場合は選択的帝王切開とは異なり、事前に十分な手術および術後経過の説明ができない、母子ともに負のバリアンス発生が多い、母親の心理状態の把握と精神的支援が困難であるといったデメリットも明らかになった。 2.出産施設の研究視察とヒアリング MFICUを有する第3次医療機関、NICUを有する第2次医療機関、産科単科の第1次医療機関、計4施設の研究視察と看護主任、師長に対するヒアリングを実施した。臨床現場で使用されているクリティカルパスや電子カルテ(未入力のもの)の説明を受け、帝王切開時のケアに関する工夫点、課題点などを情報収集した。 全体として、帝王切開術後の身体的ケアと情報提供の質の向上が認められた。しかし、術前の出産準備教育や術後の精神的支援は施設間の違いや特徴が大きく、実態調査の必要性が再確認された。
|