FGF-2遺伝子を導入したラット骨髄間養鶏細胞(mesenchimal stromal cells;以下MSC)、対照群として遺伝子未導入MSCおよびリン酸緩衝生理食塩水(以下PBS)を一過性中大脳動脈閉塞モデルラットに対して梗塞発症24時間後に尾静脈より投与した。神経症状の推移を観察したところ、投与後1週間までにFGF-2 modified MSC投与群にて対照群と比して有意な神経症状の改善を認めた。脳梗塞面積を脳梗塞発症1週間にてTTC染色を行って測定したところ、PBS投与群と遺伝子未導入MSCでは優位差を認めなかったが、FGF-2 modified MSC投与群においては有意に脳梗塞巣の縮小を認めた。以上の結果より、以前我々が行った、脳梗塞に対してのFGF-2遺伝子導入MSCの脳内移植実験と同様に、経静脈的投与によっても、遺伝子導入骨髄細胞は脳梗塞による症状改善および、脳梗塞巣縮小が得られることが判明した。今回の結果によって我々の治療法をより臨床応用に近づけることができたものと思われる。 その治療効果発現の理由付けとして遺伝子導入MSCの経尾静脈投与にてFGF-2造伝子導入MSCが虚血後脳内にて生着し、目的遺伝子を発現しているのか免疫組織学的に検討を加えた。脳組織にはFGF-2 modified MSCが細胞数としては微量ではあるが観察された。これらはFGF-2を強発現しており、導入したFGF-2遺伝子は生着後も発現していると考えられた。ただし、先述の通り、生着している移植細胞数は極めて微量であり、生着した移植細胞の効果により神経症状改善効果、脳梗塞縮小効果を発揮したかは疑問が残る。むしろ、尾静脈投与を行ったことにより、全身組織へ還流した移植細胞から発現されるFGF-2により効果を発揮したと考えられた。なお、様々な方法を用いて脳梗塞周囲への移植細胞の遊走を促すべく努力を行ったが、いずれの方法も満足できる結果は得られなかった。
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