様々な疾患に関わる細胞死にはアポトーシスが重要な役割を担うと考えられている。一方、アポトーシスだけでは説明のつかない細胞死も多数存在し、非アポトーシスの存在は無視できない。近年、ある種の神経疾患や心疾患による細胞死において、アポトーシスやネクローシスの場合とは異なった、細胞質に多数の特徴的なオートファゴソームを形成し、オートファジーを伴った細胞死の亢進を認めるタイプ2細胞死が報告されている。しかし、細胞内分解系機構の一つであるオートファジーが、タイプ2細胞死において何らかの役割を果たしていることが推測されるものの、詳細なメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では、オートファゴソーム形成機構を制御する細胞内シグナル伝達経路を明らかにすることにより、オートファジーを伴う細胞死関連実行分子を同定し、それらの果たす役割や機序の詳細な解明を行う。これまでに、ヒト子宮頸部癌HeLa細胞を用いた低酸素条件下におけるオートファジーを伴った細胞死において、CREB/ATFファミリーに属する転写因子のリン酸化が抑制されていることを新たに発見し、その転写因子活性化と結びついたシグナル伝達経路ならびに転写制御の解析や、オートファジー誘導時の細胞内構造の変化、細胞内トラフィックとの関連性について、詳細な検討を進めている。また、上記の条件下において、アポトーシス阻害剤によってオートファゴソームの形成がほとんど抑制されないことが明らかとなり、既知のアポトーシス誘導シグナル伝達以外の経路が存在する可能性も示唆された。
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