研究概要 |
1.文献検討(国内・海外文献約70件程度) 分娩体位と助産の安全性について文献よりこの研究の方向性や研究方法について検討した.分娩体位と母児に対する影響,および満足度調査等の文献により,一般に仰臥位などの水平位より坐位や立位,スクワットや膝垂位などの垂直位のほうが産婦の主体性がある,満足なお産の体験に結びついている,胎児、・新生児の健康状態がよいことや会陰の損傷が少ないことが明らかになっている.また,助産師がこれらの垂直位の分娩様式をどのように導入してきたかについて海外の文献では,助産師が介助したフリースタイルの分娩事例と医師の介助による仰臥位分娩と上記内容の比較を行うことによりフリースタイル分娩のメリットを検証する内容が多くみられた.日本ではフリースタイル分娩の導入は助産院以外での施設で充分ではなく,導入への問題点もほとんど2〜3の文献でしか扱われていないのが現状である.このことから国内調査により,分娩の安全性を明らかにし,導入については海外の面接調査をもとに日本で導入するための問題点を見いだすことが本研究の2007年度の課題となった. 2.国内調査(分娩台帳からの数値データ収集と分析) フリースタイル分娩実施病院等施設を2箇所程度,助産院は5箇所程度を予定したが,2006年度は諸都合により2007年2月に1箇所助産院のみの調査を実施した.調査は,スタッフの協力により10例の産婦の入院から娩出までの体位の変化を記録したもので,分娩所要時間や会陰の状態は垂直位の方が良好な結果であった.しかし,統計的な分析は充分行われていないので2007年度に他の施設調査で統計的解析を実施する. 3.海外調査(アクティブバース実施施設等の助産師を対象とした面接調査) 海外調査は,2007年1月2日より7日間でドイツフライブルグ市のEvangelisches Diakoniekrankenhausと開業等の助産師計5名,イギリスのレスター市でThe Leicester Royal Infirmary MIS Trust, St Mary's Maternity Unit Melton Mowbray等の施設助産師計10名に対し自然分娩をどう捉えているか,フリースタイル分娩の利点,欠点,導入に対する不安の有無やその内容に関する面接調査を行った.その結果,全員がフリースタイルの導入に関して特別な助産ケアへの不安はなく,仰臥位分娩より安全で産婦にとって主体的であり推奨するものとして捉えていた.ただし清潔野の作成や会陰保護の方法や是非については意見が異なる部分があった.医師の分娩への考え方の違いもあったが,正常分娩は助産師のみで介助する構造となっていることが両国ともほとんどであり,フリースタイル分娩実施に関して影響はないという結果であった.ドイツの調査が5名のみとなったため,2007年度に再度調査を実施する予定である.
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