本研究では、65歳以上の在宅高齢患者に対し、「有効性と安全性の観点から避けることが望ましい薬剤処方」がどの程度行われているか明らかにする目的で、65歳以上の高齢者に対して使用を避けるべき薬剤を定義した基準であるBeers criteria2003年版を用いることとした。しかしながら、この基準は米国で開発されたもので、必ずしもわが国の処方事情を反映しているとは言えない。そこで、関連分野(総合内科、精神医学、薬剤疫学など)における国内の専門家9名から意見を聞き、Beers criteria2003年版を日本の実情に見合うものとする修正作業を行った。具体的には、Beers criteria2003年版に処方された薬剤処方のうち、専門家の意見が「高齢患者に避けるべきである」との方向で一致しなかったもの、および国内で発売されていない薬剤を除外し、さらに文献検索と専門家からの提案に基づいて新たな薬剤処方の追加を行うことにより、Beers criteriaの修正版を完成させた。また調査手法や調査実施地域に関して、薬剤師会の担当者らと検討を重ね準備態勢を整えた。平成19年度はこれらの成果をふまえて、薬剤師による「在宅患者訪問薬剤管理指導」または「居宅療養管理指導」を実施している保険調剤薬局からデータ収集を行い、これを基に在宅高齢患者に関する処方薬剤および患者データベースを構築するとともに、その集計・解析および介入方策の検討を行う予定である。
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