研究課題/領域番号 |
18F17358
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
深田 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (90302207)
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研究分担者 |
PRADEL KEN 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛 / ナノワイヤ / ドーピング / アンチモン / 空隙 |
研究実績の概要 |
酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤの構造制御による機能発現を利用した新規デバイスの応用開拓を目的として研究を行った。本研究では、ZnOナノワイヤ内部にナノ空隙を形成し、ナノ空隙内部へのナノ粒子の添加により、ナノ粒子の特性を利用した新機能発現を目指す。 本年度は、フレキシブルなポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜上へのp型およびn型ZnOナノワイヤの形成制御とナノワイヤ内部に形成されるナノ空隙の観察と制御に関して研究を行った。成長法は低温、高密度形成が可能な水熱合成法を適用した。ドーピングを行わない場合のZnOナノワイヤは酸素欠損欠陥等の影響によりn型伝導を示す。一方、p型ZnOナノワイヤに関しては、酢酸アンチモン(Sb(CH3COO)3)を利用したSbのドーピングにより実現した。高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)観察およびアトムプローブ法を利用した3次元イメージングによりSbドーピング効果によるZnOナノワイヤ内部へのナノ空隙の形成を観測できた。このナノ空隙は、ナノワイヤ成長後の熱アニールおよびSbのドーピング濃度の増大に伴って大きくなることを見出した。Sbを1%導入した場合の平均的なナノ空隙のサイズは約20nmであった。アトムプローブ法を利用した3次元イメージングの結果では、ナノ空隙内に水分子がトラップされていることも確認することができた。ラマン分光およびX線回折法により、ナノ空隙の形成によるZnOナノワイヤ内部の応力歪に関しても観測することができた。 以上の成果はp型ZnOナノワイヤでは初めての成果であり、Nanotechnology誌に成果が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であったp型およびn型ZnOナノワイヤの形成制御とナノワイヤ内部に形成されるナノ空隙の観察まで達成できている。特に、アトムプローブ法を利用することで、ZnOナノワイヤ内部に形成されたナノ空隙の3次元イメージングと内部に水分子が存在することを初めて明らかにできた点は大きな成果といえる。 最終年度の2019年度には、ZnOナノワイヤを利用したバイポーラトランジスタの作製と動作実証に関する研究を計画している。この研究の実現には、p型およびn型ZnOナノワイヤから形成される疑似薄膜を交互に縦方向に積層した新規材料の形成が鍵となる。予備実験として、その積層構造の形成を行い、pnの整流特性まで確認できている。更に、最終年度に利用するナノ粒子に関してもいくつか準備できており、今後の研究計画も問題なく推進できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はZnOナノワイヤへのナノ粒子付与に関する研究を中心に行う。前年度までに確立した手法によりp型ZnOナノワイヤを形成し、ナノワイヤ内部に形成されたナノ空隙への磁性ナノ粒子および発光ナノ粒子の導入実験を行う。磁性ナノ粒子としては、Feを利用し、ZnOナノワイヤの成長後にFeをナノ空隙内部に拡散させることでFeナノ粒子の形成を行う。Feナノ粒子の形成制御を実現させるために拡散温度依存性を調べ、Feナノ粒子の形成過程を調べる。Feナノ粒子の形状、サイズに関してはHRTEM観察により調べる。PET薄膜上にFeナノ粒子含有ZnOナノワイヤを利用したピエゾデバイスを構築し、自己発電機能と磁気応答性を検証する。発光粒子としては半導体ナノ粒子を利用し、添加による発光特性寄与に関して調べる。更に、高密度p型およびn型ZnOナノワイヤから形成される疑似薄膜を交互に縦方向に積層した新規材料によるバイポーラトランジスタの動作実証を行う。
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