河口域は陸起源のプラスチックごみが海に入る場所であり、マイクロプラスチックの環境中の挙動と生物のへの影響を理解するために重要な生態系であるがその知見は極めて乏しい。本研究は、1)底泥からのマイクロプラスチック抽出、同定、計測の標準的な手法を確立する、2)河口域のマイクロプラスチックの分布を河川内及び異なる河川間のスケールで、河川環境条件と関連づけて明らかにする、3)河口域で優占する生物種(カニ類)のマイクロプラスチック摂取のリスクを明らかにすることを目的とした。 目的1)底質には主に比重の大きな鉱物粒子と、比重の小さな有機物が含まれており、これらをプラスチックから分離する必要がある。本研究では、高度・高価な機器や試薬を必要とせず、多くの研究者が採用できる方法を目指した。まず、底泥サンプルにフェントン試薬を加え有機物を分解した後、塩化亜鉛(ZnCl2)を用い、透明塩ビパイプを用いて作成した分離器に入れて攪拌後静置し、吸引ろ過しグラスフィルターに捕集し高率でマイクロプラスチックを分離し、それをNile-red染色により蛍光撮影し画像解析ソフトを用いて効率的に自動計測を行うシステムを確立した。 目的2)高知県市内の2河川の河口域(合計6測点)で底泥を採集し、1)で確立した方法により、マイクロプラスチックを測定した。同時に底泥の粒度組成、強熱減量などのパラメータを測定した。どの測点からもマイクロプラスチックが検出され、表層から少なくとも15cmまでマイクロプラスチックが堆積し、ヨシ植生のある干潟上部で密度が高く、また、底質の粒度の小さい場所でマイクロプラスチックが多いことが示唆された。 目的3)高知市内の河口域で優占する潮間帯のカニの2種;クロベンケイガニ、ハマガニを採集し、消化管内容物(胃、腸)を取り出し、底泥試料に準じた方法により、マイクロプラスチックを摂食していることを確認した。
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