本研究の目的は、小児喘息の分子表現型を解析してサブグループに特徴的な分子を特定し、喘息における環境曝露の役割を解明することである。 高性能質量分析計を用いたハイスループット分析法の開発を行った。分子表現型解析法の開発、代謝物の同定と回収率の検討、測定の信頼性、多数のサンプルのワークフローの最適化の検討を行った。解析ワークフローの確立と最適化が行われ、サンプルの処理時間が大幅に短縮された。この成果をもとに、世界喘息財団(World Asthma Foundation)の行った LUNAPRE(Lung Obstruction in Adulthood of Prematurely Born)において採取されたサンプルを解析した。未熟児、満期に生まれた軽度の喘息患者、健康な対照者と比較して、気管支肺異形成症(BPD)を有して生まれた未熟児が若年成人になるまでの分子レベルの表現型の解析を目指した。BPDを有し未熟児として生まれた若年成人は、対照群と比較して肺機能障害を示した。尿と血清の両方でメタボローム解析を行い、いくつかの特徴的な代謝物を特定できた。現在、高pH条件下でのLCMS解析を行い、BPDの影響を受ける可能性のある代謝経路を特定しよう試みている。 喘息発症と環境曝露との関係に関しては、群馬大学において行われたエクスポソーム(環境曝露の総体)研究を対象とした国際シンポジウム(2019年11月)に参加し、研究成果についての討論を行った。この会議は、参加した世界中の専門家の助けを借りて方法論や研究デザインなどのエクスポソーム研究における主要な問題に対処することを目的として開催されたものである。こらの成果をもとに、本研究をさらに発展させることを目指している。
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