研究課題/領域番号 |
18F18017
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
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研究分担者 |
Maurya Arvind 東北大学, 金属材料研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | フェルミ面 / 空間反転対称性 / スピン軌道相互作用 / 単結晶育成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はウラン・希土類化合物において空間反転対称性の破れた構造を持つ物質に焦点を絞り、純良単結晶育成、ドハース・ファンアルフェン効果測定を通じて、その電子状態をフェルミ面などミクロな視点から明らかにすることである。同時に、ウラン化合物を中心にスピン軌道相互作用と5f電子が織りなす新奇物性を開拓することも目指している。本年度は、U3Ni3Sn4の研究に引き続き、La、Th化合物、U化合物など多数の試料育成を行った。とくにハーフホイスラーの構造を持つUPt5の純良単結晶育成に成功し、空間反転対称性の破れによるdHvAブランチの分裂を観測することに成功した。スピン構造を反映した特徴的な分裂も観測されており、現在、バンド計算もふくめて解析を進めている。二つのフェルミ面が縮退する点あるいは偶然、擬縮退している点の軌道交差に関連したdHvAブランチの多数の分裂が観測されており、サイクロトロン運動をする電子のスピン構造を反映したものだと考えられる。 さらにLa化合物で空間反転対称性の破れた構造を持つ物質の超伝導を発見した。また、特徴的な結晶構造に着目するうちにUNi4P2という弱い強磁性体に着目し、自己フラックス法で純良単結晶育成に成功した。U原子がc軸方向に擬一次元的なチェーンを持つ物質であり、特徴的な磁気異方性を持つことがわかった。今後、圧力下の実験やdHvA測定などにより、新奇量子相の探索や電子状態の解明を目指す。 UNi4P2で成功した自己フラックス法による単結晶育成の技術を生かして、そのほかのウランを含むプニクタイド、カルコゲナイド化合物の物質開発も進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウラン化合物に限らず、LaやThも含む多数の単結晶育成を行なっており、その成果は学会等でも報告している。また、UNi4P2の純良単結晶育成に苦労の末、成功した。Ni-Pの共晶点を利用した自己フラックス法であり、今後の研究の進展が期待できる。また、メンブレンセンサーを用いた新しいdHvA効果測定システムの構築にも成功しており、今後、簡便にdHvA効果測定ができるようになる。このように現在のところ、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに新物質開発を進める。Ni-Pの共晶点を使った自己フラックス方はこれまでにほとんど行われておらず、プニクタイド、あるいはカルコゲナイド化合物を中心とした物質探索を行う予定である。UNi4P2については、高圧実験の準備を進めており、今後圧力下での強磁性量子臨界現象および異方性に着目した研究を進める。成果は国際会議等で発表することを予定しており、そのための旅費を計上する。
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