本研究の目的はウラン・希土類化合物において空間反転対称性の破れた構造を持つ物質に焦点を絞り、さまざまな手法を用いて純良単結晶を育成し、基礎物性測定およびドハース・ファンアルフェン効果測定を通じて電気的・磁気的性質、およびフェルミ面を明らかにすることである。これにより、空間反転対称性の破れによる新奇物性開拓とその発現機構の解明を目指すものである。 本年度は、特にURhSnに焦点を絞り研究を進めた。URhSnはZrNiAl型の六方晶の結晶構造を持ち、空間反転対称性が破れている。U原子に着目すると擬カゴメ構造を取っており、磁気的なフラストレーションが期待される。チョクラルスキー法により単結晶を育成しアニールすることによって純良単結晶を得ることに成功した。2段の磁気転移が54Kと17Kにあり、高圧下の電気抵抗測定を行った。その結果、高温側の転移温度は圧力ととともに単調に減少し、8GPa近傍でゼロになることがわかった。一方、強磁性的な振る舞いを示す低温側の転移は、圧力によって一度上昇したのち、さらに圧力を加えると、やはり8GPa近傍でゼロに向かうことがわかった。これらの振る舞いから、空間反転対称性の破れによる磁気的なフラストレーションが効いていること。なんらかの多極子相互作用が効いていることがわかった。現在、実験の詳細な結果を論文としてまとめているところである。 さらにLa化合物において、空間反転対称性の破れた系の超伝導の性質を電気抵抗、比熱測定から明らかにした。 またUNi4P2の単結晶育成に初めて成功し、その磁気的性質を異方性もふくめて詳細に調べた。
|