研究課題/領域番号 |
18F18027
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
河村 公隆 中部大学, 中部高等学術研究所, 教授 (70201449)
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研究分担者 |
BIKKINA SRINIVAS 中部大学, 中部高等学術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋エアロゾル / バイオマス燃焼 / 低分子ジカルボン酸 / イソプレン / 東南アジア / 安定炭素同位体比 / シュウ酸の同位体比 / インド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海洋大気中で高い濃度で報告されているシュウ酸など低分子ジカルボン酸の分子組成とその安定炭素同位体比の測定から、大気と海洋の相互作用をより深く理解することにある。そのために、西部北太平洋とインド洋で採取した海洋エアロゾル試料中の水溶性有機物の分子組成および分子レベル同位体比の解析に基づき、地球温暖化が進行している現在の気候と生物地球化学の結合を試みることにより、新しい地球大気化学の展開を図る。特に、重金属である鉄が大気エアロゾル中で触媒として酸化剤(OHラジカルなど)の生成に関与し、有機物の酸化・分解を駆動している可能性が高いが、その実体を観測と室内実験から明らかにすることである。 本年度は、低分子ジカルボン酸の主成分であるシュウ酸の重要な起源物質として考えられてきたイソプレンのオゾン酸化室内実験のデータ解析を行い、2つの論文にまとめた。第一の論文は、イソプレンの初期酸化生成物であるメチルテトロールなどの二次有機エアロゾルの組成について詳細な報告を行い、反応時間と共にその組成・濃度がどう変化するのかを明らかにした。また、その生成メカニズムについて考察を行い、シュウ酸の前駆体としての重要性を議論した。第2の論文はシュウ酸等低分子ジカルボン酸の生成の結果を酸化プロセスの提案を行いながら議論した。イソプレンからのシュウ酸、マロン酸、コハク酸の生成に関する報告が本研究が初めてである。これらの論文は、それぞれ、アメリカ化学会の学会誌であるEarth and Space ChemistryとEnvironmental Science and Technologyに投稿した。現在、審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アメリカ化学会で発行する学会誌Earth Planetary Chemistryに投稿したインド洋エアロゾルのシュウ酸と鉄に関する論文が受理された。また、シュウ酸の起源を議論した植物起源のイソプレンのオゾン酸化の研究結果を国際誌に投稿することが出来た。また、ジカルボン酸の主成分であるシュウ酸の重要な起源物質のイソプレンのオゾン酸化実験のデータ解析を行い、2つの投稿論文を作成した。それらは、アメリカ化学会の専門誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
西部北太平洋・小笠原諸島・父島での長期観測にて採取した海洋エアロゾル試料中にジカルボン酸と関連有機物をガスクロマトグラフ・質量 分析計(現有設備)を用いて測定したデータ解析を行う。また、その安定炭素同位体比を同位体比質量分析計(サーモフィッシャーDelta-V, 現有設備)にて測定データの解析を実施する。東アジアの人間活動によって放出・生成された微粒子の長距離大気輸送とその影響・海洋と大気の相互作用の観点からデータを解析を行い論文の執筆を行う。また、気候変動(地球温暖化)が大気組成の変化に与える影響と相互の関係についても解析を行い、植生からのイソプレンの酸化によるシュウ酸の生成の寄与など、新しい知見を踏まえて議論を深める。結果を地球化学会、European Gophysical Union (EGU)など国内外の学会で発表し、J. Geophys. Res. など国際誌に論文を投稿する。
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