研究実績の概要 |
近年、ナローバンドギャップをもつ光触媒が開発されており、ドープ金属酸化物(TiO2:Rh、約600nmに吸収端)、ペロブスカイト型ドープ金属酸化物(SrTiO3:Rh(0.5%)、約500nmに吸収端)、固溶体光触媒(GaN:ZnO、約550nmに吸収端)などがある。これらの光触媒の欠点は、(1)可視光の一部しか吸収しないこと、(2)ドーパントが光触媒中で電子-正孔再結合中心となり、エネルギー変換効率が低下すること、(3)ペロブスカイト金属酸化物および固溶体光触媒の合成に多くのエネルギーを消費することである。本研究では、光触媒としてCu2OおよびWO3半導体を用い、助触媒ナノ粒子および電子移動媒体を組み込んだ可視光応答Zスキーム光触媒システムを構築することを目的とする。 本年度は、Cu2Oナノ粒子を既報(Science 2016, 351, 1306; Zhang et al., J. Mater. Chem. 2009, 19, 5220.)に従い合成し、還元剤の量を増加させて立方体から菱面十二面体構造へと形状を変化させた。特に、{111}面と{100}面が露出した切頂八面体、および、{110}面が露出した露出した菱面十二面体Cu2Oナノ粒子の選択合成について検討した。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を保護剤に用いると、粒径はやや大きいものの(250~500 nm)、立方体、切頂八面体、菱面十二面体Cu2Oナノ粒子が選択的に生成した。一方、ポリビニルピロリドン(PVP)を保護剤に用いると、結晶面がきれいに露出した立方体、切頂八面体、正八面体Cu2Oナノ粒子が得られた。しかし、粒径が1 μm前後で光を強く散乱する傾向があり、粒子の微細化が必要である。また、Cu2Oナノ粒子に金属相が光電着されることも分かった。
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