研究課題/領域番号 |
18F18035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐伯 昭紀 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10362625)
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研究分担者 |
KRANTHIRAJA KAKARAPARTHI 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / ペロブスカイト太陽電池 / マイクロ波分光 / 機械学習 / 高分子合成 / 光電変換 / 有機エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本課題は、高効率・高安定な鉛/非鉛ペロブスカイト太陽電池(PSC)のホール輸送層(HTL)および有機薄膜太陽電池(OPV)のp型材料の両者で性能を発揮するマルチユースな高分子材料の開発と物性解明を目的とする。一般的なPSC素子は、ペロブスカイト活性層を電子輸送層(ETL)とHTLで挟んだ構造であり、ETLとHTLは100%に近い電荷キャリア移動・輸送効率が望まれる。しかし、通常のドープHTLは長期安定性に問題があるため、ドーパント不要で高効率なETL/HTLの開発が必要不可欠である。そこで、時間分解マイクロ波伝導度(TRMC)法および光電子収量分光法を用いて本課題で合成した材料の電子物性をスクリーニングして適応性を短時間で検討し、OPV/Pb-PSC/非Pb-PSCといった次世代太陽電池の実現に向けた光電子機能向上を目指す。 初年度は新規高分子の設計・合成・基礎物性評価を行った。高効率OPVを志向した低バンドギャップ高分子(LBP)の分子設計としては、大きなπ共役平面を持つヘテロアセンの導入、フッ素・イミド・チアゾールといった電子吸引基の導入、およびπ平面の側鎖アルキルに共役ユニットを挿入した2次元ユニットの導入が挙げられる。今回合成したポリマーでは、中程度のサイズのπ共役平面を有する電子供与基と、比較的小さなサイズの電子受容基を交互共重合させ、同じ長さのアルキル鎖の置換位置を変化させた。分子量は2万 kg/mol以上となり、高分子として十分の分子量を達成した。合成にあたっては、受け入れ研究者が開発した機械学習による性能予測法を基盤とした。また、TRMC評価や光吸収分光、光電子収量分光から、適切なエネルギー準位を持つ高分子が合成できたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(半年間)では、新規高分子の設計と合成、ならびにその基礎物性評価を計画した。実際に2種類の高分子を合成して基礎評価を終えているため、おおむね順調に進展している。分子量およびアルキル鎖長のチューニングは膜物性、特にフラーレン誘導体とのバルクヘテロ構造や電荷キャリア移動度に大きな影響を与えるため、同一骨格で複数の高分子を合成してOPV素子評価・AFM・2次元微小角XRD・蛍光消光を評価する予定である。特に、2次元微小角XRDはSPring8での実験であるため、マシンタイムの時間と時期が限定される。そのため、課題の採択状況を考慮しながら計画的に高分子合成と素子評価を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年度は合成した高分子のOPV評価に加え、Pb/SnペロブスカイトのHTLを想定した素子作製・評価と電荷ダイナミクスの研究を行う。これまでに受入研究者はTRMCを用いて、鉛PSCにHTLもしくはETLを下地もしくは上部に積層した膜において、ナノ秒~マイクロ秒で起こる電荷輸送層への電荷移動過程を評価・解析する手法を確立している。そこで、新規に合成した高分子のドーパント有無条件でのホール移動効率をTRMC測定から検証する。ドーパントなしでも優れた電荷移動・輸送効率と金属電極とのオーミック接合を形成するため、高分子のHOMO準位・キャリア移動度・主鎖配向・バッファー層を総合的に検討し、OPV・Pb-PSC・非鉛PSC・低環境負荷太陽電池に対してマルチユースな高分子の設計を提案し、有機半導体の新たな分野を開拓する。
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