金属錯体を基盤とした多孔性材料に関する研究において、従来の多孔性配位高分子 (PCP/MOF)のように3次元に秩序だった多孔体ではなく、より構造的自由度をもたせたアモルファス多孔性材料が注目を集めている。本研究では、金属錯体多面体(MOP)と呼ばれる細孔の最小単位と考えられる分子を重合することでソフトマ テリアル化し、構造秩序性の制御、新しい機能発現を目的に研究を行う。本研究計画では、特に可逆的な共有結合で連結した新しい有機/無機ハイブリッド材料を構築する。その特徴は以下の2点に集約される:(1)予めデザインした細孔(MOP)と集合構造の秩序性を独立して制御が可能、(2)マクロ構造の自由度が高く、結晶、 ゲル、膜など様々な形態を作り分けることが可能。最終的には、分子レベルで厳密に制御された新しい多孔性ソフトマテリアルの創 成へとつながることが期待される。 今年度は可逆的な動的共有結合により連結可能な、新規の金属錯体多面体(MOP)の合成及び同定と重合反応検討を行った。カルバゾールジカルボン酸誘導体を有する八面体型MOPの合成をこころみた。カルバゾールのN位にベンゾアルデヒドを有する配位子を合成し、酢酸ロジウムと反応させた。結晶化を試みたがX線構造解析が可能なサイズの単結晶を得ることはできなかった。そこで、動的光散乱の測定を行ったところ、分子サイズである10nm以下に特徴的なピークを得た。また、溶液中の拡散定数を測定することで、サイズの確認やNMRスペクトル中の個々のピークの同定を可能するDOSYNMRの測定を行ったところ、得られた拡散定数は、以前に合成されたMOPの拡散定数と類似していた。結果として、狙い通りの八面体構造を有するMOP([Rh2L2]6: L = カルバゾールジカルボン酸誘導体)が合成されていることが示唆された。
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