研究課題/領域番号 |
18F18047
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30312979)
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研究分担者 |
PHAN HOP 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | ベンゼン / バイオレメディエーション / 嫌気分解 |
研究実績の概要 |
本年度を通じて、ベンゼン分解集積培養系の維持と更なる集積を試みた。蓮田土壌等、嫌気環境における土壌にベンゼンを継続的に添加することで確立した集積培養系などに、継続してベンゼンを添加した。培養系の更なる大規模化に関しては、これまでの数十mL規模の培養系から、300mLの培養系を複数作成し、ベンゼン分解の維持を行うことに成功している。また、スポンジ担体に定着させたベンゼン分解微生物系についてはベンゼン分解活性を維持し続けることができなかった。その代わりに、改めて集積系の希釈植え継ぎにより、100倍希釈した培養系までベンゼン分解活性を維持できている。 さらに、ベンゼン分解活性の向上を目指し、新たな培養条件の検討を行った。ベンゼン初発代謝経路の候補と考えられているUbiDカルボキシラーゼのコファクターとなるPrenolの添加や、マグネシウムやナトリウム塩の濃度を変更したもの、各種有機酸を添加したものについて検討を行った。その結果、培地成分としてwiddel培地を用いた植え継ぎにより、3-4 mg/L/dayと過去最速の分解速度が達成された。一方で、検討した添加物質いずれを用いても、この最速の分解速度をさらに向上させるものではなかった。これら分解が促進したものと分解が停滞したものについて、微生物群集構造の変化をアンプリコンシーケンス解析により比較したところ、分解促進した7条件すべてにおいてHasda-Aの存在割合が実験前の3-4%から15%程度と大幅に上昇しており、あらためてHasda-Aのベンゼン分解への強い関与が示された。 上記実験において、ベンゼン分解が促進した培養系と集積培養系について、メタゲノム解析を行った。メタゲノム解析を行うために適したDNA抽出方法の検討を行ったのちに試料作成し、受託解析企業に送付して、年度末に生データを得ることができた。来年度にデータ解析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り集積培養系を維持しつつ、更なる集積化を進めることに成功している。また、ベンゼン分解に明確な差を持つ培養系を作成し、比較メタゲノム解析を行うための試料の獲得にも成功した。メタゲノム解析のために必要な量と純度のDNAを回収するための抽出条件の検討に時間を要し、メタゲノム解析試料の送付までに時間を要したが、今年度中に解析データの生データを得るところまでは達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
メタゲノム解析については、これまでに我々が情報を得ている範囲での、ベンゼン分解に関与する遺伝子の探索などは我々でも十分可能であるものの、より広範な遺伝子の解析や、嫌気有機物代謝全体にかかわる解析については極めて専門的な知識を要する。このことから、嫌気性微生物群集の遺伝情報解析を専門としてきた産総研の延優研究員に研究協力を仰ぎ、遺伝子解析の方針をすでに昨年度から相談している。来年度早々、メタゲノムの生データを持参して解析に協力いただくことで、ベンゼン分解とその周囲にかかわる遺伝子を広く解析していく予定である。
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