前年度に取得した集積培養系を引き続いて集積、継代することで、さらに集積を高めた。その際に、定量PCRを用いてベンゼン分解微生物と推定されているHasda-Aの存在割合を定量するとともに、ベンゼン分解速度を計算し、ベンゼン分解微生物の集積過程や、Hasda-Aおよびその他ベンゼン分解に関与しているとみられる微生物の菌数と、ベンゼン分解速度との定量的関係を明らかにした。元の培養系から5倍、10倍に希釈を行ったところ、ベンゼン分解速度の低下は見られず速やかに集積が進んだ。さらに5倍、10倍希釈したところ、ベンゼン分解速度は低下したが、繰り返しベンゼンを添加することで速度の向上が見られた。最終的に500倍希釈まで行い、ベンゼン分解微生物の集積が大きく進み、Hasda-Aの存在割合も30%を超えるまでになった。Hasda-Aの存在割合とベンゼン分解速度には強い正の相関がみられた。 ベンゼン分解を継続している培養系と、メタン生成阻害物質などを用いてベンゼン分解を阻害した培養系を作成し、比較メタゲノム解析を行った。さらに、阻害実験におけるmRNAの発現解析を行い、ベンゼン分解に関与している遺伝子を転写発現レベルでも解析した。メタゲノム解析の結果、ベンゼン分解阻害系にくらべ、ベンゼン分解が継続している培養系ではDeltaproteobacteria Hasda-Aの存在割合が高く、メタゲノム解析の結果からも、改めてHasda-Aのベンゼン分解への寄与が確認された。一方で、嫌気ベンゼン分解の分解経路として、関与が考えられる既知の酵素の遺伝子に近縁な遺伝子は検出されず、極めて新規な酵素系、遺伝子が分解に関与していることが示唆された。
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