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2019 年度 実績報告書

低次元材料におけるコヒーレント・フォノン輸送の制御

研究課題

研究課題/領域番号 18F18058
研究機関東京大学

研究代表者

塩見 淳一郎  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)

研究分担者 HU SHIQIAN  東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2018-11-09 – 2021-03-31
キーワード2次元材料 / フォノン輸送 / 分子シミュレーション / ナノセルロース / 最適化
研究実績の概要

前年度に引き続き、ナノセルロース材や2次元グラフェンや二硫化モリブデンを積層した構造などについて解析を進めた。まず、ナノセルロース材については、熱伝導率の異常的長さ依存性については確認できなかった理由が、構造の非直線性に由来することがわかった。次に、2次元材料の層構造について、格子動力学、分子動力学、原子グリーン関数法などの計算手法を織り交ぜながら、フォノンのエネルギースペクトル分布の計算や、統計的解析に基づく局在・非局在状態の同定を通じて、メカニズムの検証を行った。加えて、熱伝導率を最小にする構造を見出すべく、最適化計算を実践した。最適化手法としては、申請者らが開発した、ベイズ最適化と熱輸送計算を組み合わせた手法を適用した。なお、今回ははじめて、熱輸送計算に計算負荷が比較的高い分子動力学法を用いることで、格子の非調和性も考慮した構造最適化を実現した。具体的には、積層膜の各層の2次元材料の種類そのものを記述子とすることで、多くの候補構造の中から最適な構造を同定した。最初に数十個の候補をランダムに選択して熱伝導率を計算し、その結果をもとにベイズ最適化により良い性能が見込める数十個の候補を決定してそれらの熱伝導率を計算した。これを繰り返してデータを数十個ずつ増やしていき、その結果、全候補数の数パーセントの数の構造を計算するだけで最適構造を同定できた。その結果、最適な構造はグラフェンと二硫化モリブデンを特定の非周期的な順番で積層した場合に得られることがわかり、その熱伝導率は空気のそれよりも小さくなることを発見した。さらに、上記のメカニズムの解析手法を適用した結果、その極めて小さい熱伝導率はアンダーセン局在とは異なる局所的な構造におけるフォノンの局所化によって生じている可能性を示した。なお、本構造は原理的には実験で作製が可能なはずであり、今度の実現に向けた発展性も大いにある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

分子動力学計算と機械学習によって設計したグラフェンと二硫化モリブデンを非周期的に積層した最適構造によって、空気と同等の低熱伝導率が得られることが解析により明らかになり、これは当初の予想を大きく上回る驚くべき結果であるため。

今後の研究の推進方策

最終年度の4ヶ月間は、これまでの分子シミュレーションによって得た研究成果について、論文の執筆を進め、投稿・発表する。その中でメカニズムの議論を深める。例えば、グラフェンと二硫化モリブデ ンの2次元構造を積層した構造については、前年度までに、熱輸送計算と機械学習を組み合わせて熱伝導率を最小にする最適構造を同定する手法を用いて、面直方向の熱伝導率が非常に小さい非周期的な構造を設計することに成功しており、このメカニズムを明らかにすることで、制御性をさらに高度化できると考える。特に、本研究で解析技術を発展させてきたフォノン波の共鳴や局所化の観点から解析を行い、非周期構造の局所構造を活かす戦略を軸に進める。さらに、将来的に実験で実現することを念頭に、これまでに計算を用いて設計した構造のうち、実験で計測しやすいものを選別し、熱伝導率およびその温度依存性を計測する計画を立てる。コロナウイルス感染拡大の影響もあり、実際に実験を行うことは難しいが、活動制限解除後に速やかに実施できるように実験系の設計や準備を進める。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Disorder limits the coherent phonon transport in two-dimensional phononic crystal structures2019

    • 著者名/発表者名
      Hu Shiqian、Zhang Zhongwei、Jiang Pengfei、Ren Weijun、Yu Cuiqian、Shiomi Junichiro、Chen Jie
    • 雑誌名

      Nanoscale

      巻: 11 ページ: 11839~11846

    • DOI

      10.1039/C9NR02548K

    • 査読あり / 国際共著

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公開日: 2021-01-27  

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