研究課題/領域番号 |
18F18063
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
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研究分担者 |
KUMAR RAJESH 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-07-25 – 2021-03-31
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キーワード | カーボン / 触媒 / グラフェン / 酸化グラフェン / 燃料電池 / キャパシタ / 還元型酸化グラフェン |
研究実績の概要 |
燃料電池の触媒担持体には炭素材料が広く利用されているが、表面積がさらに大きく、導電性がさらに高く、腐食劣化に対してさらに高い耐久性をもつ材料の開発が期待されている。 申請者らは特に、還元型酸化グラフェン(rGO)に着目した。rGOは2次元シート型構造に起因する表面欠陥を持つことが明らかになっている。rGOはその構造から、表面に官能基を導入することで、金属ナノ粒子や金属酸化物ナノ粒子を担持することが可能になり、電子伝導性とイオン伝導性を制御して、様々な電気化学触媒活性を設計することができる。 今年度は、rGOの大量合成および精製を実現し、燃料電池の触媒担持体、電解質膜添加剤として、あるいはスーパーキャパシタ用多孔体としての性能を評価することを目的とした。rGOに担持した触媒をSEMやTEM、X線回折装置(XRD)、X線光電子分光装置(XPS)を用いて分析し、キャラクタリゼーションを行った。特に、NiO, Co3O4, Mn3O4, Fe3O4, Cu2O等の酸化物微粒子で修飾したrGOシートの合成では、これらの微粒子が表面に固着され、rGOシートで被覆あるいはカプセル化した様子と層状構造や多孔質構造が観察された。これらの微構造は電気化学素子の電極として好適であると考えられた。また、rGOの化学修飾はシートの凝集や再固化を防ぐだけはなく、有効表面積を増大させて電気化学的活性を向上すると期待された。また、研究成果の学術論文としての公表はもとより、関連材料分野の技術調査を行って、レビュー論文として積極的に投稿を行い掲載を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
得られた酸化物ナノ粒子修飾rGOにおいて、今年度、以下の重要な研究成果を得ることができた。(1)ハニカム状の端面オープン構造を有するNiO/Co3O4担持rGO電極材料を合成し、スーパーキャパシタ電極として応用した。得られた電極材料が高容量(910 F/g)と優れたサイクル特性(2000サイクルで容量保持率89.9%)有することを実証した。(2)Mn3O4-Fe2O3/Fe3O4@rGOコアシェルハイブリッドの合成とスーパーキャパシタ電極としての応用を検討した。こちらは590.7 F/g の高容量を示したものの、1000サイクル後の容量維持率は64.5%であった。電極の三次元微構造を制御することでさらに安定性が増すと考察した。(3)マイクロ波照射によるrGO被覆コバルト酸マンガンの合成スーパーキャパシタ電極としての応用を行った。 また、グラフェン、h-BN およびMoS2などの層状物質の蓄電応用およびグラフェン誘導体の合成とリチウムイオン電池への応用等に関する技術調査を行い、重要な機能設計指針を議論する波及効果の大きい国際共著Review論文(Nano Research 2019 IF=8.040, Progress in Energy Combustion Science 2019 IF=26.242、Materials Today 2019 IF=24.372)を公表した。さらに、国際共同研究を通じて、電気化学素子のみならず、電磁波遮蔽効果を有する材料やレーザ直接照射を用いたrGOパターニングなど新しい取り組みの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も本研究を引き続き連携を取りながら遂行する予定である。rGOの大量合成については、手順がほぼ確立したので、rGOの様々な応用展開を進める。また、国際的な共同研究も継続的に実施する。
現在、rGOナノシートを無機フィラーとしてポリベンゾイミダゾール(PBI)に添加したコンポジット電解質膜シートを用いた中温無加湿燃料電池の発電特性評価を行っている。既に150℃無加湿条件下での発電を確認している。研究成果の一部を学術論文「Development of polybenzimidazole modification with open edges/ porous reduced graphene oxide composite membranes for improved PEM fuel cell performance」として投稿する予定である。また今後、共同研究を推進すると共に、コンポジット電解質膜の薄膜化、リン酸ドープレベルの低減を行い、発電特性の向上と長期発電安定性の改善に取り組む。また、得られた研究成果の原著論文としての公表はもとより、関連材料分野の調査を行い、レビュー論文としてまとめて行きたいと考えている。
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