研究課題/領域番号 |
18F18064
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
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研究分担者 |
ADABIFIROOZJAEI ESMAEIL 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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キーワード | アルミニウム / 窒化ケイ素 / 界面 / 電場 / 拡散 |
研究実績の概要 |
金属とセラミックスの界面の物理的、化学的特性は、これらで作製されているデバイスの性能を決定することになり、デバイスがどれだけ最適化されるかを理解するには、この界面の綿密で詳細な解析が必要となる。本研究においては、窒化ケイ素とアルミニウムの界面におおいて熱と電場が同時に作用することによる物理的、化学的特性の変化を解析する。この目的のために純度の異なる窒化ケイ素を用意し、100nm程度のアルミニウム層を物理的な手法によりコートして界面を形成した。この界面をTEMにより観察した。界面においてアモルファス相が観察されたが、相互拡散は認められなかった。さらに、欠陥やツインは観察されず、今後の解析に適した清浄で緻密な界面を作製出来ていることを確認できた。 一方、堆積したアルミニウムの組織粒径は約1μmと大きく、これらの組織粒にいくつかの転位が観察されたが、今後の試験には影響がないと考えられる。アルミニウムと窒化ケイ素の相互拡散を解析するには、大きいサイズの組織粒のアルミニウムは解析に適しており、さらに、窒化ケイ素の純度は堆積したアルミニウムの特性へ影響せず、純度の異なる窒化ケイ素のどちらも用いても今後の解析に良好な界面を得ることが可能であることを明らかにした。物理的手法での界面を作製することが可能であることが分かったので、同じ手法で作製した界面においてアルミニウムと窒化ケイ素が相互作用し始める温度を探索した。350℃、450℃、550℃、650℃で24時間の真空熱処理を行なった。従来の研究からの予想どおり、相互作用した層はSEMの分解能では界面には見られなかったので、これらの試料ではTEM用試料を作製したので、今後観察をしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミニウムと窒化ケイ素の界面の形成に成功し、SEMによる観察により、SEMでの観察によりガラス相の生成を明らかにすることが出来ている。TEM観察用の作成にも着手しており、概ね研究計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験により、物理的堆積手法による窒化ケイ素上へのアルミニウムの堆積は、清浄で解析に適した界面となっていることが明らかとなった。350℃、450℃、550℃、650℃で24時間の真空熱処理を行なった試料に関して、TEM解析用の試料作製を進めている。次年度は、切断、研磨、ディンプル加工、およびイオンエッチングにより作製した試料でTEMでの制限視野回折、EDSとEELSでの組成分析を行う。これらの構造解析と組成分析によりアルミニウム金属と窒化ケイ素セラミックスの反応温度を明らかにする。これらの解析は、温度と電場を同時に印加した場合の金属―セラミックス界面その場TEM観察の下準備ともなる。反応温度を明確にし、その温度で処理した試料をその場TEM観察に用いる。このその場観察用試料は、FIB加工により作製する予定である。TEM観察用試料において、界面での熱による挙動を検討するために、予備的な加熱時その場TEM観察を実施する。この時の観察でも制限視野回折、EDSとEELSでの組成分析を行う。加熱により物理的、化学的な変化が予想され、その場加熱TEM観察をさらに発展させて、加熱と電場印加の同時作用による影響の検討へと推進する予定である。これは、電場による金属ーセラミックス界面の制御が可能であるかどうかを解明するという、この研究課題の最終目標に向けて重要な知見となる。また、アルミニウムが溶融する前の界面での電気伝導性も確認する。
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