レーザー照射による局部急速加熱を用いた微小部材の精密な加工が行われている。その際、大きな熱勾配によって生じる圧縮応力波が、部材の破壊や局部損傷を引き起こすことがある。昨年度の簡単な構造の2次元材料(グラフェーン)のシミュレーションによる衝撃損傷発生の原子レベル機構解析結果を参考にして、単結晶銅に対する超高速ひずみ負荷下における微視構造変化について本格的な解析を実施した。キャビティ等のナノスケールの欠陥生成過程や粒界の発生・消滅過程やそれらの分布および結晶構造の変化を時間を追って丁寧に追跡するとともに、その緩和過程を含む材料全体の損傷メカニズムとメカニックスを明らかにすることができた。さらに、皮膜の存在による変形拘束効果の解明にも取り組んでおり、前年までの研究と合わせて、体系的な成果を得てきている。本年度の国際研究誌に掲載された論文は3報であり、この他に2報を投稿中である。来日前からの当研究グループとの共同研究を合わせて、損傷メカニズムの詳細を明らかにすることができ、微細な(ナノメートル・スケール)結晶粒材料を作りだす考え方が深まった。一方、ナノメートル材料の強度に関する詳細実験については、電子顕微鏡その場負荷観察試験装置による損傷・破壊実験に関する実験を行って結果を得ている。ただし、高速負荷およびその観察に大きな困難があるため、成果は基礎的段階に留まっており、今後も共同研究を継続するための装置改良を進めている。
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