研究課題
果樹白紋羽病菌のウイルスハンティングの過程で、ユニークなウイルス/ウイルス間相互作用を発見した。本菌から得られるウイルス精製画分からは、ヤドヌシウイルス(YnV1), ヤトドカリウイルス(YkV1)が検出された。YnV1は非分節型dsRNAウイルスで、 キャフプシド蛋白質(CP)とRNA合 成酵素(RdRp)をコードする。YkV1は RdRpドメインとプロテアーゼトドメインをコードするプラス(+ )1本鎖RNAウイルスである。具体的に下記の項目を実施し、 「ヤドカリウイルスYkV1の宿借性」を証明した。1) 作製済みのYkV1感染性cDNA上でRdRp触媒領域に変異を導入し、感染性の有無を調べた。既に、YkV1の感染性cDNAクローンを 確立してある。本クローンにRdRp触媒領域GDDあるいは対照として3'非翻訳領域に各種変異を導入し、感染性を調べた。その結果、3'非翻訳領域の変異株は複製能を有していたが、RdRp変異株は感染性を消失した。2) YkV1感染性cDNA上で様プロテアーゼ触媒領域に変異を導入し、感染性の有無を調べた。感染菌糸より精製した粒子画分中 に、YkV1にコードされると考えられる100 kDaのRdRp領域とC末端側の40 kDa蛋白質の検出に成功した(Zhang et al., Nat Micro biol 2016)。1)と同様にプロテアーゼ触媒領域--GDVEKNPGP---に変異を導入し、ウイルス複製能を調べた。その結果、複製能を保持している変異株と消失した変異株が得られた。2A様プロテアーゼ活性とウイルス複製への影響をさらに調べる必要がある。 以上の結果は、YkV1の複製にYkV1 RdRpが必須であることが明らかとなり、その活性に2A様プロテアーゼが必要である可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請時にて提案した研究項目を実施し、目的達成に貢献するデータを得た。
上記のように、YkV1(RNA型の新奇Virophageと提唱)の感染戦略・両ウイルスの唯一無二の共生関係を詳らかにした。1) 作製済みのYkV1感染性cDNA上でRdRp触媒領域(GDD)に欠失(GD)および置換変異(GAD)を導入し、感染性の有無を調べた。対照として3'非翻訳領域2箇所に変異を導入する。その結果、3'非翻訳領域変異株は、複製能を維持していたが、RdRp触媒領域の変異株の複製能は消失した。今後は、精製ヘテロ粒子中でmRNA合成活性があるかどうかを調べていく必要がる。2) YkV1感染性cDNA上で2A様プロテアーゼ触媒領域--GDVEKNPGP---に変異を導入し、感染性の有を調べた。その結果、PGの変異株(NAGP, NTGP, NRGP, NPAP)は複製能は消失した。一方、変異株(KQGP, NPGA)は複製能を保持していた。興味深いことに、変異株株の複製能はプロテアーゼ活性と完全に一致した。すなわち、プロテアーゼ活性を維持している変異株は、複製能を有している可能性が示された。今後、プロテアーゼ活性と複製能の関係を詳細に調べる必要がある。
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Environ Microbiol
巻: 20 ページ: 1464-1483
10.1111/1462-2920.14065
http://www.rib.okayama-u.ac.jp/pmi/index.html