研究実績の概要 |
果樹白紋羽病菌のウイルスハンティングの過程で、ユニークなウイルス/ウイルス間相互作用を発見した。本菌から得られるウイルス精製画分からは、ヤドヌシウイルス(YnV1), ヤドカリウイルス(YkV1)が検出された。YnV1は非分節型dsRNAウイルスで、 キャプシド蛋白質(CP)とRNA合 成酵素(RdRp)をコードする。YkV1は RdRpドメインとプロテアーゼドメインをコードするプラス(+ )1本鎖RNAウイルスである。 具体的に下記の項目を実施し、「ヤドカリウイルスYkV1の宿借性]のコンセプトの確立に努めた。 1) 昨年作成したYkV1 RdRp GDDモティーフの変異株をさらに増やし、同様の解析を進め、「宿借性」にYkV1 RdRpが必須であることを確認した。 2) 昨年合成した6つの2A様プロテアーゼ変異株に加え、さらに6つの変異をYkV1感染性cDNA上で変異を導入し、感染性の有無とプロテアーゼ活性を調べた。その結果、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞内でのプロテアーゼ活性と宿主菌でのウイルス複製能が一致した。すなわち、プロテアーゼ活性を消失した変異株は、白紋羽病菌での複製能も消失した。興味深いことに、弱いプロテアーゼ活性を有する変異株は、長期間維持すると2A様プロテアーゼが野生型に復帰したウイルス株が出現した。以上の結果は、YkV1の複製には、RdRp領域がポリプロテインから切断される必要があることを強く示唆する。 3) YkV1/YnV1感染株から塩化セシウム平衡密度勾配遠心法により、粒子を分画した結果、それぞれ単独で粒子化されていることを示唆するデータを得た。
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