研究課題
骨格筋損傷後の再生においては、骨格筋幹細胞(MSC)の適切な増殖が必須の過程であり、MSCの維持・制御には、それらを取り 巻く微小環境(ニッシェ)が重要な役割を果たしている。しかしながら、ニッシェがどの様にMSCを制御しているのか、その詳細な機構は不明のままである。骨格筋損傷時に局所では炎症が惹起されマクロファージなどの炎症細胞が増殖・浸潤してくる。 一方で、これら免疫細胞は細胞内代謝の大規模な改変(代謝リプログラミング)を介して、機能を変化させていくことが知られている。本研究課題では、骨格筋損傷後の再生過程におけるマクロファージの役割に着目し、骨格筋損傷時の炎症シグナルから 惹起されるマクロファージ内の代謝リプログラミングがどのように骨格筋幹細胞の機能を制御するのか「炎症」と「代謝」と 新たな側面から研究を行った。組織在住マクロファージ(M2マクロファージ)を任意のタイミングで除去できるCD206-Diphteria toxin receptor Transgenic mice (CD206DTR-Tg)マウスを用いて、M2マクロファージがMSCの維持・制御に関与しているか明らかにした。カルディオトキシン(CTX)を筋注することにより誘導される筋挫滅モデルを用いて、CD206DTR-Tgマウスに炎症を誘導したところ、野生型マウスと比較して筋組織の炎症が軽減し、筋再生の促進が見られた。この結果はM2マクロファージが筋組織の炎症に関与し、骨格筋再生に負の役割を持っていることが解った。また、M2からM1へのトランジションにおいてNAD分解酵素CD38の発現上昇が見られ、NADレベルの低下を介した代謝の改変が起こっていることが示唆された。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 5544
doi: 10.1038/s41598-020-62506-w
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle
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doi: 10.1002/jcsm.12530