研究課題/領域番号 |
18F18116
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70292951)
|
研究分担者 |
REJA SHAHI 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 蛍光プローブ / 破骨細胞 / 蛋白質ラベル化 |
研究実績の概要 |
がん細胞の骨組織への転移は、がんの進行に伴い起こる現象である。現状、骨転移の解析ツールが無いために骨転移の進行を調べ、治療することは困難である。そこで本研究では骨転移に関連する活性化した破骨細胞が分泌する酵素、カテプシンK活性を見るための蛍光プローブを開発し、この問題を解決することを目的とする。システインプロテアーゼであるカテプシンK活性により蛍光スイッチがオンとなる蛍光色素を開発し、骨組織へとデリバリー可能な修飾を施すことで、In vivoで骨転移の進行状況を可視化することを目指す。 また、本研究では発蛍光性を有するタンパク質の修飾技術の開発にも取り組む。高コントラストな蛍光画像を得る上で、洗浄操作なしで迅速かつ低濃度でタンパク質を標識することのできる蛍光プローブの開発が重要である。このようなプローブに要求される条件は、遊離状態では非蛍光性で、標識されると蛍光強度が上昇するとともに、その標識速度が速い必要がある。本年度においては当研究室で開発されたPYPラベル化システムを用い、近赤外蛍光色素を細胞内の標的タンパク質にラベル化する方法の開発に取り組んだ。近赤外蛍光色素の多くは脂溶性の緩和のため、アニオン性の官能基が導入されており細胞膜透過能がない。一方で、Si-Rhodamine系の色素は電荷を持たない状態と双性イオンの状態との平衡にあり、膜透過性を有することが知られている。そこで、Si-Rhodamineを修飾したPYP-タグリガンドを開発した。プローブに発蛍光性と細胞膜透過性を付与することで、生細胞内でPYPタグを融合発現させた標的タンパク質を高いコントラストでラベル化する系を構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カテプシンK活性により蛍光スイッチがオンとなる蛍光色素として、BODIPY色素骨格を基に、消光基となる分子を導入した化合物を設計した。消光基側にはアミド結合を持たせており、システインプロテアーゼであるカテプシンKの基質として認識、切断が起こるものを選択した。カテプシンK選択的に切断される基質を合成し、実際にカテプシンKに対する反応性、および他のシステインプロテアーゼに対する選択性について評価を行ったが、消光基として適切な基質は得られなかった。 一方で、発蛍光性を有するタンパク質の修飾技術の開発に取り組み、Si-Rhodamine系の近赤外蛍光色素をPYPタグリガンドに導入した蛍光プローブを設計、合成した。この蛍光プローブは遊離状態では蛍光を示さないが、PYPタグとの結合により蛍光が上昇する性質があることを確認した。また、生細胞内に発現させたPYPタグタンパク質を無洗浄でラベル化すする事に成功した。こちらに関しては当初の計画以上に研究が進展しており、上記の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、カテプシンKに対する反応性、選択性に優れた基質と基質分解に伴う蛍光スイッチングを可能にする色素の探索を進める。 また、タンパク質修飾用蛍光プローブの評価を進める。非共有的な相互作用によってタンパク質を標識する手法は可逆性を持たせることができるため、機能性ラベル化剤の入れ替えや、結合・解離に伴って蛍光分子を点滅させることが可能である。特に、後者の点滅原理はタンパク質1分子単位で観察することで、光の回折限界を突破した超解像イメージングへの応用が期待できる。そこで、可逆的にタンパク質を標識することができ、かつ結合したときのみ蛍光を示す蛍光プローブを設計、合成し、タンパク質のラベル化を実証する。 標的タンパク質、蛍光プローブの検討を行い、プローブが結合した時に高いコントラストで蛍光イメージング可能なシステムを構築する。最適化した蛍光プローブを用いて、生細胞の標的タンパク質のラベル化を行い観察し、可逆性について調べる。
|