本年度の主な目的は、阿弥陀信仰の諸相を明らかにするため、文献分析とともにフィールドワークをとおして現代の実態を把握することであった。したがって、フィールドワークの地域を広めつつ調査先に合わせて文献分析を行った。本年度のフィールドワーク対象地域は、関東(東京都・茨城県)と四国(全県)と東北(岩手県・山形県)と北陸(石川県・富山県)であった。 具体的には「実施計画」にしたがって、四国と関東との巡礼における阿弥陀如来および北陸の真宗教団についてフィールドワークを行った。本年度は、中国地方を対象にすることができなかったが、東北の天台寺院(中尊寺・毛越寺・立石寺)は、本研究においてより重要であることが執行中に判明したため、中国地方に代えて東北でフィールドワークを行った。文献調査は、叡山文庫と龍谷大学図書館と国立国会図書館で行い、調査先では資料収集した。 「研究目的」で定義した三つの寺院分類「通例」「応用」「異例」に沿って、具体的には、巡礼というテーマにおいて四国八十八ヶ所巡礼という通例から、それをモデルに応用した新四国曼荼羅霊場を経て、関東と四国の二十四輩巡礼という異例まで視野を広げた。これらの調査によって、幅広く地域的だけではなく教義的にも則して阿弥陀信仰を分析することができた。通例と応用様式の対象として、比叡山と東北の立石寺との対照的な境内構造も取り上げ、「縁起」や年中行事と関連した資料とデータを多数収集した。 また本年度は、アプリを自作し、フィールドワークのデータをそのアプリに記録し、試用版を作成した。今後は、データを増加しアプリ自体を改良した上で、一般的に利用できる状態にする予定である。 本年度までの研究成果は、国内外の学会で発表でき、天台の阿弥陀信仰と隠れ念仏についての発表も予定している。さらに今後は、以上の分析を進め、論文等で成果を公表する。
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