群ロボットは、リーダー不在でも自発的に環境適応し群れの形を変えるほか、仕事の分担や、不具合の補完など、単体のロボットにはなしえない複雑な仕事を効率よくこなすことができる。このような群ロボットは、医療や災害の現場での応用が期待され、現在では小型化に向けた競争が激しくなっている。申請者らは、最近、従来の機械式の群ロボットではなく、化学的に分子部品を組み立てることで、世界最小の群ロボット(分子ロボット)を開発することに成功した。本研究では、申請者らが開発した分子ロボットの発展を目指し、光信号により自律的に物質輸送可能な分子システムを構築することを目的としてきた。2020年度には、前年度までに構築した分子システムおよび時空間制御システムを用い、本研究課題である“光信号により自律的に物質輸送可能なシステム”の実行可能性を評価した。具体的な評価項目としては、1)光スイッチングの応答性(波長、照射強度および照射時間の依存性から評価)、2)輸送される輸送体のサイズや輸送体の種類(ラテテックス微粒子、磁性微粒子、有機結晶など)、3)輸送体の輸送効率(補足率と補足距離から試算)、4)輸送される輸送体の空間制度(フォトマスクのサイズ依存性より評価)などを検討することで物質輸送可能な分子システムを開発するうえで解決しなければならない課題を明らかにした。
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