研究課題/領域番号 |
18F18324
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
後田 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (10342601)
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研究分担者 |
ZHOU QIDONG 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / フレーバーの物理 / レプトンフレーバーの破れ / スーパーBファクトリー |
研究実績の概要 |
平成30年度は、belle2linkと呼ばれるBelle II実験で共通に使用される高速光データ転送プロトコル及び、Belle II DAQ 制御システムの通信フレームワークを、COPPERのアップグレードモジュール (UGM) に実装するために、FPGAファームウェアの開発を行った。 現行のBelle II DAQシステムでは、各検出器のフロントエンド電子回路(FEE)からのデジタル化された信号が belle2link を通して収集される。アップグレード後も、UGM が belle2link を使用しないと、各検出器のFEEの変更が必要となり、それに伴う多大な労力、バグを混入させる可能性などから、非常に好ましくないことになる。そこで、UGMにbelle2linkを搭載できることを検証するために、KEKにおいてUGM候補モジュールのテストベンチを構築した。Belle IIのCDC検出器のFEEおよび模擬のFEEとUGMの間に、belle2linkを通してデータ転送を試み、いずれの場合についても転送がエラーなく成功することを確認した。また、これらのbelle2linkの検証テストは海外の共同研究機関においても再現された。 続いて、DAQの制御システムをUGMに実装するために、ファームウェアを新たに開発した。まず、既存のCOPPERとCDCのFEEを用いて、A7D8、A16D32および連続データアクセス方式を試み、制御コマンドが正しく機能していることを確認した。 以上の研究結果を含む Belle II DAQシステムのアップグレード計画と開発状況について国際会議(6th KEK Flavor Factory Workshop)でポスター発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速光データ転送プロトコルbelle2linkがUGMに搭載できるように、ファームウェアの開発と実装を成功させ、複数の検出器のFEEで構築したテストベンチで高速光データ転送の性能に問題がないことが確認した。これにより既存のBelle II読み出しシステムは、期待通り、COPPERのみを候補となるUGMに変更することで高度化できることが検証された。 開発したBelle II DAQの制御システムをテストするために、当初は通信用のソフトウェアドライバの開発を予定していたが、その後、関連する機能をFPGAファームウェア上で実現できることがわかり、それを開発し、既存のCOPPERとCDCのFEEを使用したテストベンチを用いて、制御の確認を行った。こちらは当初の想定よりも良い進展をもたらしたと言える。 以上により、全体的におおむね順調であると言え、また、一部においては当初計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
KEKにおいて、できるだけ多くの検出器のFEEとUGMを用いてテストベンチを構築し、高速光データ転送の性能を確認する。開発したbelle2linkのファームウェアモジュールと他の機能のモジュールを統合し、システムとしての機能を確認する。また、UGMのデータ転送・処理能力試験、ビットエラー頻度確認、耐ノイズ試験などを行い、性能を評価する。UGMを用いたBelle II DAQの制御システムのソフトウェアを開発し、制御テストを行う。
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