研究実績の概要 |
1926年に導入された指標和Kloosterman和は,群G=SL(2,Z)のBruhat分解と関係するKloosterman集合上に定義されることが報告されている.ここで,Bruhat分解は,群Gと関係するワイル群Wとボレル部分群Bを用いてG=BWBと表される分解である.D.Bump, S.Friedberg, D.Goldfeld(1988)は,Kloosterman和の高次元への拡張として,SL(3,Z)に対するKloosterman集合上にKloosterman和を定義した.また,Kloosterman集合をさらに細かく分解し,細分化した集合上にKloosterman和を定義することで,Kloosterman和の分解が可能であることを報告した.この結果を利用してV.Blomer, J.Buttcane, P.Maga等を中心に,SL(3,Z)におけるKloosterman和の研究が進展した. 本研究では,D.Bump, S.Friedberg, D.Goldfeld(1988)の結果について分析し,Kloosterman集合を先行研究の分解とは異なる分解をすることにより,より深い性質について考察することを目的とした.具体的には,G=SL(2,Z)において,Kloosterman集合の分解を,シューベルトカルキュラス理論で用いられるBott-Samelson分解を元に考察した.実際,直接Bott-Samelson分解を使用することはできないことが明らかになったが,ワイル群の最長元に対するBruhat分解について,Bott-Samelson分解に修正を加えることにより,Koosterman集合に新たな分解を与えることができた.
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今後の研究の推進方策 |
まず,本年度の結果をSL(3,Z)に拡張する.計算段階の確認には,計算数式処理ソフトSageを用いて確認を行う.次に,Kloosterman集合の分解の成果をもとに,分解したより小さい集合上にKloosterman和を定義し,それによって得られるKloosterman和の性質について研究を進める.また,SL(3,Z)のKloosterman集合の細分化に対するD.Bump, S.Friedberg, D.Goldfeldによる先行研究との比較を行う.さらに,Metaplectic群への拡張について考察する.
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