研究課題
3次元トポロジカル絶縁体(3D-TIs)は、理論的には興味ある物性が予測されているが、実験としてはバルクに存在するキャリヤの熱励起のために、本質的な物性を観測する事が困難である。本研究では、トポロジカル物質の中でも高品質な単結晶が育成できる Bi2-xSbxTe3-ySey(BSTS)等を用いて、気相輸送成長法により、その高品質な薄膜を成長して、興味ある電子物性を実験で観測する事を目的に研究を進める。また、磁性元素であるMn、Co、Ni、Crを表面層に導入する事により、表面の時間反転性の破れを制御した高品質の薄膜単結晶を成長し、縦磁気抵抗、ホール抵抗、熱電変換係数(ゼーベック係数)、ネルンスト効果などの物性を研究する。今年度後半期では、二つの新しい磁気量子物質の創製研究を遂行した。(1)磁気元素を導入したトポロジカル絶縁体ともう一つは(2)磁気物性を有する2D物質である。(1)高品質V/Crドープトポロジカル絶縁体 BixSb2-xTeySe3-yおよびSn-BixSb2-xTeyS3-yの(V0.05Bi0.97Sb0.98TeSe2, Cr0.08Bi0.96Sb0.96TeSe2、Sn0.01Cr0.1Bi1.05Sb0.84Te2S)の合成を行い電気特性を調べた。しかし、V/Cr-3DTIはバルク状態で強磁性を示さなかった。現在、研究を続行している。(2)高品質の2次元強磁性絶縁体Cr2Ge2Te6の単結晶をGe-Teフラックス法で合成した。強磁性転移が、65K で観測された。現在、本物質系の磁気特性を共同研究として、同研究所の他のグループと共同で実験を進めている。
3: やや遅れている
磁性元素を含んだ3次元トポロジカル絶縁体物質の合成が困難で高品質の物質合成に時間がかかっている。しかし、磁性元素を含んだ2次元Cr2Ge2Te6の合成には成功したので、実験を進めている。
磁性元素を含んだ高品質の3Dトポロジカル絶縁体の合成が必要である。合成方法を再検討して、研究を進展させる必要がある。
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Physical Review B PHYSICAL REVIEW B (R)
巻: 99, ページ: 081113_1-6
10.1103/PhysRevB.99.081113