研究実績の概要 |
平成30年度は「適応型ゲスト結合システム」について検討を行った. ピラー[5]アレーン空孔の両末端にそれぞれチアオキサクラウンエーテルユニットを導入して金属イオンを結合することができるようにしたピラー[5]-ビス-チアオキサクラウン(1)を3段階で合成し金属イオンによって選択性を制御することができる「適応型ゲスト結合システム」について検討した. 化合物(1)ではチアオキサクラウンエーテル部位では金属イオンを,一方,ピラーアレーン部位では有機ゲストを捕捉することができ,ハイブリッド錯体を形成することが予想された.はじめに鎖長の異なるα,ω-ジシアノアルカン(N≡C-(CH2)n-C≡N, n=2(C2),n=3(C3),n=4(C4),n=5(C5),n=6(C6))との錯形成を1H NMRスペクトルによって検討したところ,n=6を除くゲストがピラーアレーン部位に包接されることが明らかになった.このときの安定度定数はC2>C3>C4>C5>>C6(C6はほぼゼロ)であった.また,n=2~6すべての錯体の結晶構造が得られた.一方,(1)に2当量の銀イオンを添加したところ,2個の銀イオンが上下のチアオキサクラウンエーテル部位に包接されることが明らかとなった.この銀錯体にn=2~6のジシアノアルカンを添加したところ,n=2と3のα,ω-ジシアノアルカンのみがピラーアレーン部位に包接されることがわかった.このときの安定度定数はC2>C3>>C4=C5=C6(C4,C5,C6はほぼゼロ)であった. 以上のことからこの化合物は金属イオンの添加によって特定の長さのα,ω-ジシアノアルカンのみを選択的に包接する「適応型ゲスト結合システム」であることが明らかになった.
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