研究実績の概要 |
本研究では「金属支援超分子集合体を基盤とする新規分子機械の開発」を目的として以下のテーマについて検討した. [1.銀イオンによってキラリティーを増大する分子] サイクレン環または側鎖に不斉を導入したテトラアームドサイクレンが銀イオンと錯体を形成すると円偏光二色性スペクトルにおけるコットン効果と旋光度を増大することを見出した.また,側鎖をフェニル基からビフェニル基にすることでさらに大きなコットン効果を示すことを明らかにした. [2.キラル銀食い分子の側鎖プロトンの帰属] 側鎖に不斉を導入したテトラアームドサイクレンの銀錯体のプロトンNMRにおいて測定される4種類の側鎖芳香環のオルト位のプロトンシグナルをすべて帰属した.また,側鎖芳香環の銀イオンに対するコンホメーションがこれらのプロトンシグナルの高磁場シフトの大きさと相関することを見出した. [3.溶媒によって単結晶間相互作用が発現するピリジン含有2座配位子の銅錯体] ピリジン含有新規2座配位子の銅(II)錯体は単結晶状態で溶媒によって単結晶間構造変換を起こすことを見出した. [4.銀錯体形成時の溶媒と配位子/金属比によって構造が変化する銀食い分子] サイクレンの1,7-位にピリジン側鎖を導入したテトラアームドサイクレンの銀錯体は配位子(L):銀イオン(Ag+)の比や再結晶溶媒によって,環状二量体(L:Ag+=1:1,CH3CN含有混合溶媒),直線状一次元配位高分子(L:Ag+=1:2,CH3CN含有混合溶媒),ジグザグ1次元配位高分子(L:Ag+=1:2,CH3CNが含まれていない混合溶媒)のように多彩に構造変化した錯体を形成することを見出した. 以上の結果は,不斉の導入や溶媒の種類などによって分子の構造や動きを制御することができることを示しており,金属支援超分子錯体を利用した分子機械開発に一定の指針を示したものと考えている.
|