研究課題/領域番号 |
18F18362
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60451788)
|
研究分担者 |
SHARMA ALKA 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
|
キーワード | ナノチューブ・グラフェン / 光物性 / ナノ構造物性 / ナノ物性制御 / ナノマイクロ物理 |
研究実績の概要 |
2018年度は、光伝導度分光によりバンドギャップ収縮の物理を明らかにするため、単一の架橋カーボンナノチューブを組み込んだ電界効果トランジスタ構造の試作と評価に取り組んだ。 デバイス試作については、クリーンルームにおける半導体微細加工により電界効果トランジスタ構造を作製した。まず、酸化膜付きシリコン基板を用いて、電子線描画とドライエッチングにより架橋構造のための溝を加工した。二回目の電子線描画とスパッタ成膜により電極を形成し、三回目の電子線描画で触媒領域をパターニングした。その後、ダイシングによりチップキャリアへ配置できるサイズに切り分けた。作製した電界効果トランジスタ構造へ触媒を塗布してリフトオフを行い、化学気相成長によりカーボンナノチューブを合成した。 試作したチップに対して、フォトルミネッセンス顕微分光によりカーボンナノチューブのカイラリティや位置を特定した。自動三次元ステージ上に試料を設置し、デバイスの架橋部分をレーザーで走査し、単層カーボンナノチューブによる発光を検出することで位置を確認した。励起光源として用いているチタンサファイアレーザーの波長を変化させることで励起分光を行い、吸収共鳴波長と発光波長の組み合わせからカイラリティを同定した。カーボンナノチューブが組み込めていることが期待できるデバイスについて、ワイヤーボンディングによりチップキャリアへ配線した。 配線したデバイスに対し、レーザーをナノチューブに照射し、バイアス電圧を印加して光電流をロックイン検出することで評価した。特性の良いデバイスを選び、フォトルミネッセンス励起分光と光伝導度分光を同時に測定してスペクトルを取得した。表面吸着分子の有無により遮蔽効果が異なり、バンドギャップ収縮が起きることが期待されるため、空気分子の吸着前後でのスペクトルを比較し、励起子準位のエネルギーが異なることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では単一の架橋カーボンナノチューブを組み込んだ電界効果トランジスタ構造を用いて、光伝導度分光によるバンドギャップ収縮の物理を明らかにすることを目的としている。 今年度は、11月に来日してからの4ヶ月ほどで光伝導度分光測定を習得し、また、クリーンルームにおけるデバイス作製手法も経験している。初期的な実験において空気分子の吸着前後でのスペクトルを比較し、励起子準位のエネルギーが異なることを確認できているため、おおむね順調に研究が進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き単一の架橋カーボンナノチューブを組み込んだ電界効果トランジスタ構造を利用した光伝導度分光測定に取り組み、光伝導度分光によりバンドギャップ収縮の物理を明らかにすることを目指す。 電界効果トランジスタ構造については、電子線描画・ドライエッチング・熱酸化・スパッタ成膜などのクリーンルームプロセスにより作製し、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを合成する。また、作製できたチップに対し、フォトルミネッセンス顕微分光によりカーボンナノチューブのカイラリティや位置を特定し、各デバイスの評価を行う。特性の良いデバイスを選び、測定対象とする。 光伝導度分光測定では、カーボンナノチューブにおけるバンドギャップ収縮に対する分子吸着の影響を実験的に調査する。加熱により分子脱離状態を作り、大気暴露により分子を吸着させ、光伝導度スペクトルを比較する。分子吸着時には、連続端のエネルギーが低下することが期待されるため、連続端が光伝導度で検出できるカイラリティのナノチューブに対して、分子吸着時と脱離時の連続端のエネルギー位置を測定する。複数のカイラリティにおいて再現性を確認し、理論モデルとの比較を行う。順調に進んだ場合、光励起キャリアまたはゲート誘起キャリアによるバンドギャップ収縮の評価実験に着手する。
|