研究課題/領域番号 |
18F18373
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 潤児 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40227905)
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研究分担者 |
PAUL BAPPI 筑波大学, 数理物質系, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | CO2の還元 / 不均一触媒 / 水素化 / エタノール / 電気化学 / カソード触媒 |
研究実績の概要 |
CO2の水素化による化学品の合成は CO2の削減と工業的に有用なアルコール類などの化合物の生成を同時に行える手段として注目を集めている。CO2と水素からメタノールを生成する触媒反応が広く調べられてきた。一方、C-C 結合を有する有用化成品の直接合成も重要な課題である。最近、 CO2と水素からエタノールを生成する触媒反応が報告され始めているが、C-C 結合が効率的に生成するメカニズムは明らかになっていない。我々は電気化学的な効果に注目し、アノード反応とカソード反応が触媒上で同時に起きているという仮説に基づいて以下2つの観点から研究を進めている。一つは、異種の触媒すなわち、アノード粒子とカソード粒子を近接した種々の触媒を調製してエタノール合成に活性な触媒を調製することであり、もう一つはモデル反応システムを用いて、アノード反応とカソード反応が同時に進行することを検証する。その結果、エタノールおよびプロパノールを合成する触媒を見出すことができた。さらに、モデル反応器においてアノード反応とカソード反応が同時に起き電流が流れることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CO2からエタノールを合成する電気化学反応が起きるにはアノード極で H2をプロトンに酸化する反応と、カソード極で CO2を還元する反応が起きなくてはならない。アノード極とカソード極の触媒を複合した単一の触媒で上記の酸化還元反応が起きていることを確認するために触媒表面上に流れる電流を測定する反応器を作成した。片方の電極には CO2還元触媒として知られる 触媒ナノ粒子を、もう片方の電極には H2のプロトン化を触媒するPt系 触媒を用い、それぞれをカーボンペーパーに塗布した。カーボンペーパーの片側は気相に接し、反対側は液相に接するように設置した。この反応器に Ar および H2/CO2混合ガスを導入し、両電極間に流れる電流を測定した。Ar ガスを導入した際には電流値はほとんど変化しなかったのに対し、CO2/H2混合ガスを導入すると電流値は負の方向へ変化し、50 bar で約 0.6 mA を示した。この結果は、CO2/H2混合ガスを導入した際には、酸化反応と還元反応が同時に進行することを示している。次に、カソード極とアノード極になりえる二種類以上の金属元素を含む触媒、Pd、CeO2、Zn、Cu、Pt、Au、In、RuおよびCo3O4を組み合わせた触媒を合成し、 活性評価を行った。各触媒と電解質を加えて、H2、CO2混合ガスを4 MPaで導入し、反応温度 150 °Cのもと閉鎖系で活性評価を行った。この結果、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールを生成する触媒を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
モデル反応システムを用いて、電気化学的な効果と熱反応的な効果の寄与を調べるために、反応温度を変化させて電極間に流れる電流を測定する予定である。電流値から予想されるエタノールの生成量を計算し、実際に生成物量をガスクロマトグラフィによって測定することで、ファラデー効率を見積もる。また、反応経路を調べるために、反応中間体と考えられるCO やエチレンを予め導入し、吸着種の分析および活性測定を行う予定である。
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備考 |
筑波大学数理物質系 触媒表面科学研究グループ http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~nakamura_lab/index.html
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