研究実績の概要 |
近年、不均一系触媒(Cu,Pd混合系)を用いて二酸化炭素を水素化するとエタノールが生成すると報告されているが、メカニズムは全く分かっていない。本研究では、エタノール生成が電気化学的メカニズムで進むとの仮説を持ってメカニズム解明に臨んだ。そのためにモデル触媒反応器を構築し電気化学的メカニズムでエタノールが生成するか否かを明らかにすることを目的とした。同時に、粉体触媒を用いて、電気化学的メカニズムの検証を試みた。ステンレス製モデル反応器はバッチ型であり、内部にはカソード用Cu触媒とアノード用Pt触媒が設置され、両者は短絡され、その間に流れる電流を測定することができる。反応温度は反応器全体を加熱することで制御した。電解質と30気圧のCO2/H2混合ガス(1:3)を反応器に加えて、電流を測定し、さらに反応後の生成物をガスクロマトグラフで分析した。反応温度は80 ℃程度とした。CO2/H2混合ガスを導入した場合にのみ、反応電流が検出された。CO2のみ、H2のみ、Arのみの場合には、有意な電流は検出されなかった。生成物としてCO、エタノール、プロパノールが検出された。未だ電流値と生成物量の関係はよく一致してないが、電気化学的メカニズムで触媒反応が進行している可能性が高い。ただし、室温では反応が進行しないことから、反応メカニズムには熱的な反応素過程が含まれていると考えられる。また、粉体実験においては、Ru/Co2O3触媒を用いたCO2の水素化実験を集中的に行った。電解質を加えた場合には、COやエタノール、メタノールの生成が確認された。電解質を加えない場合には、それらの生成物の量は少ない。再現性確認の実験を続けているが、混成電位駆動型メカニズムの可能性が高いとみている。
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