研究課題
本研究では、モエジマシダをはじめとするイノモトソウ属シダの根圏土壌中からヒ素の可溶化を促進させる微生物を選抜、同定し、その微生物を接種した系でのヒ素溶出促進を確認するとともに、モエジマシダとその根圏微生物の相互関係を遺伝子レベルおよび代謝産物レベルで詳細に解析することを目的とした。モエジマシダ等の根圏から合計77株の細菌を単離し、亜ヒ酸酸化活性、ヒ酸還元活性、シデロフォア生成能力、IAA生成能力等の評価を行い、いずれの能力も高い2株(m318株およびr507株)を得た。m318株を根圏土壌に接種したところ、モエジマシダでは最大1.5倍、イノモトソウでは最大2.3倍のヒ素溶出効果が得られた。データベースより得られた遺伝子情報から、m318株が非リボゾームペプチド遺伝子クラスタを保有しており、シデロフォアを合成する可能性があることが推定された。そこでm318株をシデロフォア産生培地で生育させたところ、951種の既知物質が同定され、IAAや抗生物質、coenzyme Q10の前駆体であるUbiquinoneなどが見出されたが、既存のシデロフォアは見出されなかった。そのため、m318株はこれまで報告されていない新規のシデロフォア(またはその類似物質)を産生している可能性が高いことが明らかになった。モエジマシダの根抽出物を解析し、培地へのヒ素添加により影響を受けたと考えられる代謝経路27種類を同定した。これまでモエジマシダの根抽出物(根の代謝産物)の解析(メタボロミクス)は行われておらず、世界初の研究成果である。以上総括すると、本研究によりモエジマシダとその根圏微生物の相互関係を遺伝子レベルおよび代謝産物レベルで解析するMulti-omicsの土台がを確立できた。今後本研究の成果をヒ素高蓄積植物と根圏微生物との相互作用の解明とその環境修復への応用に繋げたい。
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