研究課題/領域番号 |
18F18395
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺本 好邦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40415716)
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研究分担者 |
CHAKRABARTY ARINDAM 京都大学, 農学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / ピッカリングエマルション / 相変化材料 / 表面修飾 |
研究実績の概要 |
国を挙げたセルロースナノファイバー(CNF)の基幹材料化の機運の中で,世界的にはナノセルロースをベースとしたエマルションの報告が近年相次いでいる。本研究では,相変化材料(PCM:高温で熱吸収,低温移行時に潜熱放出)を内包したo/wピッカリングエマルジョンを設計・調製している。太陽熱エネルギーを貯蔵し,且つ特別な施工を必要としない水性塗料(住宅や温室用等)を設計することが目的である。ピッカリングエマルジョンの安定化剤として,表面修飾したCNFを用いる。懸念されるPCMの漏出を修飾CNFで防ぐ。既存材料の置き換えでなく,CNFの特性を活かして省エネに直接貢献したい。 本年度は,昨年度に設計したカチオン修飾CNF(cNF)を安定化剤として使用して,超音波を使わず攪拌のみのスケーラブルなプロセスでピッカリングエマルションを調製できることを,まず確認した。このエマルションを使用して,熱エネルギーを貯蔵できるブロックコポリマー(BCP)/cNFナノコンポジット水分散液を開発した。BCPはステアリルメタクリレート(SMA)の可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合と,それに続くcNF安定化ピッカリングエマルションでのメタクリル酸メチル(MMA)の共重合によって得た。ナノコンポジット中のポリSMA(PSMA)セグメントは,側鎖の融解と結晶化により,熱エネルギーを吸収・放出する能力を示した。ピッカリングエマルションとナノコンポジットラテックスの安定性と収率は,cNFの置換度(DS)に大きく依存した。興味深いことに,cNFで安定化されたBCPは,典型的な界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムで安定化されたBCPよりも大きな潜熱を有していた。これはナノコンポジット化されていることの効果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
cNFによるBCPの安定化へのcNFのDSの影響を完全に明らかにすることができただけでなく,cNFによって安定化されたBCPラテックスが,一般的な界面活性剤を使って調製したラテックスよりも大きな熱エネルギー貯蔵能を持つことを見いだせたのは,当初の計画以上の成果である。これらの成果を,著名な環境関連化学のジャーナル(ACS Sustainable Chemistry and Engineering)に投稿し掲載されるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的である熱エネルギー貯蔵型CNF系ラテックスを開発することができたので,今後はcNFによるピッカリングエマルションの安定化についての基礎データを集積し,安定化機構を一般化して論じたい。
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