研究課題/領域番号 |
18F18398
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
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研究分担者 |
XU YU 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 窒素同位体比 / エアロゾル / 有機態窒素 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本年度は大気エアロゾル中のアミノ酸について、ウシ血清アルブミン(BSA)等を標準物質として用い、加水分解後のアミノ酸安定同位体比(窒素、炭素)を測定する手法を確立した。石英繊維フィルターに添加した濃度既知のアミノ酸の標準物質を用い、溶媒抽出、加水分解や誘導体化等のプロセスの後、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)およびGC-同位体比質量分析計(GC-IRMS)に導入し、化合物の質量および安定同位体比を測定した。これにより、アミノ酸の化合物ごとに室内ブランク濃度や回収率、再現性について検証した。 また、大気エアロゾル中のアミノ酸の安定同位体比を起源トレーサーとして用いる場合、実大気中での代表的な反応過程であるオゾン酸化反応を受けた際に、反応の前後でアミノ酸各化合物の安定同位体比に変化がないかどうかを調べる必要がある。そこで本年度はさらに、エアロゾルのオゾン酸化による同位体分別効果の影響を調べた。室内実験として、アミノ酸の標準物質および森林観測サイトで石英繊維フィルター上に採取した大気エアロゾル試料(TSP)をオゾン酸化し、その前後でアミノ酸の窒素、炭素の安定同位体比が有意に変化するかどうかを調べた。その結果、加水分解後にアラニン、グリシン、バリンなど主要なアミノ酸を含め、ほとんどの化合物の安定同位体比について、オゾン酸化の前後で有意な変化は見られなかった。この結果から、大気でのオゾン酸化反応を経ても、エアロゾルの植生起源トレーサーとして用いることのできる具体的なアミン酸の特定が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気エアロゾル中のアミノ酸の安定同位体比測定に関し、高い精度での分析測定手法を確立したとともに、オゾン酸化による安定同位体比の変化の有無も調べた。植生起源トレーサーとして最適なアミン酸の具体的な特定も進んでおり、当初の研究計画について概ね順調に達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
既に取得している森林大気エアロゾル試料を用い、植生起源トレーサーとしての有用性を確認したアミノ酸について、その安定同位体比(窒素、炭素)の測定を拡張して行う。エアロゾル有機態窒素への起源寄与やその季節変化等を明らかにするため、研究を推進していく。
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