研究課題/領域番号 |
18F18405
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒田 直敬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (50234612)
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研究分担者 |
ELMAGHRABEY MAHMOUD 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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キーワード | 非酵素的化学発光イムノアッセイ / キノン / 酸化還元サイクル / シグナル増幅 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、化学発光イムノアッセイにおける検出手段として一般的な酵素標識法に代わる新たな手段として、キノンをシグナル発生タグとして用いる非酵素的超高感度化学発光法を開発し、HCV コア抗原に対する化学発光イムノアッセイへの応用することにある。本研究ではアビジン-ビオチンシステム及びデンドリマー技術を組み合わせた手法により抗体へのキノン標識を行う。最初に、1,2-ナフトキノン-4-スルホン酸とビオチンヒドラジドを結合させることにより、ビオチン化ナフトキノンを合成した。ビオチン化ナフトキノンに還元剤ジチオスレイトールと化学発光試薬ルミノールを添加することで、ビオチン化ナフトキノンの濃度に応じた強い発光が観察されることが確認できた。したがって、ビオチン化抗体とビオチン化キノンとをアビジンを介して結合させる手法により、抗体に捕捉した抗原量を化学発光強度として測定可能な方法へと展開できると考えられた。次に、より強い発光を与えるようなビオチン化キノンを開発するために、第 3 世代ポリリジンデンドリマーの合成を試みた。第 3 世代ポリリジンデンドリマーは構造中に 8 残基のアミノ基を有しているが、このアミノ基すべてにナフトキノンを導入後にビオチン化することで、1 つのビオチンに対して 8 分子のキノン部位を有するビオチン化キノンを得ることができ、これまでに作成したビオチン化キノンよりも更に強い発光を与えることが期待された。既報にしたがって t-Boc リジンを原料としてポリリジンデンドリマーの合成を行なった。しかしながら、第 2 世代までの時点での合成の収率は 3.5%と非常に低く、第 3 世代ポリリジンデンドリマーの合成は困難であることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗体の標識に利用可能なビオチン化キノンを一段階の反応により容易に合成する手法を開発することができた。さらに、合成したビオチン化キノンは還元剤と化学発光試薬を添加することで長時間持続する安定な化学発光を与えることを確認できた。また、ビオチン化キノンデンドリマーの開発のために、ポリリジンデンドリマーの合成を試みたが反応収率が低く、目的とする第 3 世代ポリリジンデンドリマーの合成は現在までのところ達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に合成したビオチン化キノンを市販の ELISA キットと組み合わせて化学発光イムノアッセイを開発し、ビオチン化酵素を用いる従来のイムノアッセイとの性能比較を行う。また、合成が困難であったポリリジンデンドリマーに代えて、市販のポリリジンポリマーを原料として合成を行うことにより、1 つのビオチンに多数のキノンを結合させた化合物の作成を検討する。さらに、ビオチン化キノンを用いる化学発光イムノアッセイに適した化学発光試薬として、N-(4-アミノブチル)-N-エチルイソルミノール (ABEI) と還元剤 α-リポ酸を直接結合させた化合物の合成を行う。将来的には、本研究で開発した手法をエジプトで罹患率の高い疾患の診断法へと展開していきたい。
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