研究課題/領域番号 |
18F18409
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
齊藤 達哉 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 非常勤講師 (60456936)
|
研究分担者 |
UDDIN Md Myn 徳島大学, 先端酵素学研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
|
キーワード | 炎症 / 免疫 |
研究実績の概要 |
自然免疫機構であるインフラマソームは、誤って活性化した際に、あるいは極端に強く活性化した際に、適応免疫などを介して過度の炎症による組織障害を惹起し、様々な疾患の発症要因となることが知られており、有望な創薬標的と考えられている。受入研究者は、痛風・肺炎などの発症に関わるNLRP3インフラマソームや敗血症などの発症に関わるNon-canonicalインフラマソームについて、その活性化を抑制する微生物由来成分や生理活性脂質をこれまでに複数見出している。本研究では、微生物由来成分や生理活性脂質がインフラマソームを抑制する際に働きかける標的因子を同定し、当該因子をヒントに不明な点が残されているインフラマソームの活性化機序や生体内における炎症誘導機序を明らかにする。自然免疫を専門とする受入研究者が、適応免疫や微生物由来成分に明るい研究員と共に、抗炎症薬の開発に資する基盤的研究を推進する。H30年度は、Non-canonicalインフラマソームを阻害する生理活性脂質として同定した15d-PGJ2について、ビオチン修飾された15d-PGJ2を用いてマウスマクロファージの細胞溶解液から結合因子を精製し、質量分析により同定した。また、マウスマクロファージの細胞溶解液中において、同定した因子とビオチン15d-PGJ2が結合することをウエスタンブロッティングにより再確認した。さらに、一部の因子については、リコンビナントタンパク質とビオチン15d-PGJ2を用いて、両者が直接的に結合することを確認した。一方で、マウスプライマリーマクロファージにおいて、NLRP3インフラマソームを阻害する微生物由来成分として同定したNanaomycin Aにより発現量の変動する因子を、プロテオミクスの手法を用いて同定した。一連の解析により、次年度以降に解析対象とするインフラマソームの制御因子候補を選出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、15d-PGJ2と結合する因子を包括的に同定することに成功した。結合因子の中には、Non-canonicalインフラマソームの活性化に関わることが報告されている因子も複数含まれていた。さらに、Nanaomycin Aにより発現量の変動する因子を、プロテオミクスの手法を用いて包括的に同定した。
|
今後の研究の推進方策 |
【15d-PGJ2の効果に関する研究】前年度に行ったショットガンプロテオミクスにより、マウスプライマリーマクロファージの溶解液からビオチン標識された15d-PGJ2に結合する因子を複数同定した。興味深いことに、いくつかの結合因子はノンカノニカルインフラマソームの活性化に関わることがすでに報告されていた。そこでH31年度は、(1)当該因子と15d-PGJ2が結合することを、ウエスタンブロッティングにより確認する。結合が確認された場合には、(2)15d-PGJ2が結合することにより、当該因子の働きにどのような影響が出るのかを、ウエスタンブロッティングや蛍光免疫染色などを用いて解析する。さらに、(3)ノンカノニカルインフラマソーム活性化時にオルガネラ動態がどのように変化するのか、15d-PGJ2の処理がオルガネラ動態の変化にどのような影響を与えるのかを知るために、透過型電子顕微鏡観察を行う。 【Nanaomycin Aの効果に関する研究】前年度に行ったプロテオミクスにより、マウスプライマリーマクロファージにおいて、Nanaomycin Aの存在下・非存在下で発現量の異なる因子を複数同定した。そこでH31年度は、(1)当該因子の発現量がNanaomycin Aにより変動することを、ウエスタンブロッティングにより確認する。発現量の変化が確認された場合には、(2)マクロファージ細胞株J774において当該因子をCas9/CRISPRやRNA干渉を用いて欠損させ、当該因子がNLRP3インフラマソームの活性化に必要であるかどうかを検証する。さらに、(3)当該因子の発現量が、転写、転写後、翻訳、翻訳後のどの段階において変動するのかを、定量RT-PCRやウエスタンブロッティングを用いて解析する。
|